もう、何か言葉で表現するのは難しいです。
とにかく、打ちのめされます!!
終映後、しばらく席を立てません。
感動するんじゃない…打ちのめされる。どうしていいのか分からない…
土塀の掘っ立て小屋みたいなのが、ぽつんと1軒たっている砂の大地…
その掘っ立て小屋を目指して、とぼとぼと歩く人の列…
ボロ布をまとったような風体の男達はやっとたどり着いたこの地で、新たな仕事を始める…
仕事…じゃないな…「労働」という名の刑罰だ。
広大なゴビ砂漠を開墾するために設けられた「労働改造収容所」
砂漠のあちこちに掘られた穴が彼らのねぐらだ。穴を塞ぐように渡した板の天井…
食料の供給もほとんど無い砂漠の真ん中で、荒廃した大地を人力で開墾するなど不可能に近い…
それでも、彼らは罪人として、淡々と作業に就き、命の火を日に日に弱めていく…
中国共産党の急な政策転換で罪人とされた彼らは主に知識階級で、教養のある人達だ。
だからこそ、この過酷な状況の中でも、表向きは平穏に過ぎていく…ただ、毎日毎日、過酷さに耐えきれなかった罪人が死んでいく…
表向きは…そうあくまで表向き…
人間としての「誇り」をも奪い去る「労働改造」の結果も映画の中でちゃんと画かれている。
自分が生き残るために、密告し、略奪し、果ては遺体に手をかける…
陳さんという班長と李さんという青年が、主として登場する。
元公安の冷静な陳さんは昼夜ほとんど寝ずに皆に目を配る。
李さんは同宿の死んだ罪人の妻が遺体を求めて訪ねてきた時も、かつての恩師を収容所でこのまま死なす訳にはいかないと脱走を試みる時も、最後まで「人間」だった。
監督のワン・ビン(王兵)さんは、こうした収容所のわずかな生存者達に丹念に取材を重ね、まるでドキュメンタリーかと思うような「無言歌」を完成させた。
「人間」ではいられなくなるような収容所の中で必死に生き抜いた何人もの生き様が、陳班長になり、李さんになっていったのだろう。
今ある物を撮るドキュメンタリー…
ドキュメンタリー監督として評価の高いワン・ビン監督が、今既に無い物を撮ろうとした結果の本作。
本国である中国では、上映が認められなかったそうだ。
ただ、淡々と収容所の日常を映し出すだけの映画だけど、自国の「過去」に向き合うものだ。中国での上映は確かに難しいのかも…
同じ日に、ヘビーなテーマを扱った「灼熱の魂」を観たけど、その映画が霞むほどの圧倒的なパワーを観た!!