今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

愛、アムール


白いリボン」でカンヌのパルムドールを獲得したミヒャエル・ハネケ監督の新作「愛、アムール


5月閉館の銀座テアトルシネマにて、クロージング作品「天使の分け前」の1個前の上映作品として公開…


先のアカデミー賞では見事「外国語映画賞」を獲得し、主演のエマニュエル・リバさんは最高齢の主演女優賞ノミネートで話題になった。


とある映画評で、「老老介護」の現実を描いた作品で他人事とは思えない現実を見つめている…と。


ピアノ教師として充実した生活を送ってきた女性が、ある日病に倒れ、右半身不随に陥り、さらには徐々に痴呆の症状も発症していく。


意識がはっきりしているうちに、女性は入院を拒み、自宅での療養を夫に約束させる。


「自分」という自意識を強く持った女性ならではの選択を夫も認め、自身も年齢による衰えに悩まされながら、愛情深く献身的な看病をする。


しかし、夫の心も少しずつ少しずつ蝕まれていく…


淡々と、2人の日常が描かれる。


場面はリビングやキッチン、玄関ホール、そして、妻が寝ている寝室と切り替わるけれど、全てドアで繋がっているアパートメントの中だけで展開する。


カメラの引いた状態でアパートメント全体が見渡せてしまう閉じられた空間の中に観る側が閉じこめられてしまったような錯覚に陥る。


そこにやってくる来訪者とのやり取りは、現実にありそうなことばかり…


少し前、ガンの治療のために入院した私の母…その母への対応を巡り、父と交わした会話…劇中の父娘との会話とは状況も違うし、内容だって違うけど、まるで父と私の姿を見せつけられているようだった。


人間はたとえ相手を思いやっているつもりでも、その目線は結局「自分」を離れることはない…


老老介護」の行き着く先…


結末は突然訪れる。


でも、他に何か道はあるのか…


肯定は出来ないけれど、否定も出来ない。ましてや、非難など出来るハズもない…


終わった時に気づいたけれど、この映画にはBGM がない…


ピアノの音、鳥の声、物音、CDから流れる音楽…そこにある「生活」によって、生み出された「音楽」しか流れない。