最後の山登りに出かけた日本人クライマーの足跡を辿るノンフィクション…
山に惚れ、山に愛されたために山に眠ることになった登山家の最期の時を…
「残された山靴」佐瀬稔著(ヤマケイ文庫)
以下、感想…
著者である佐瀬稔さんご自身も病に倒れ、まだまだやりたいことがたくさんあったであろう道の途中で遠い旅に出られた。
佐瀬稔さんの著作一覧が文庫の最後にまとめてあったが、クライマーについての作品が多いかなと…
そうした取材の中で、知った未踏の地へ挑む人達の「死」
生きて、帰ることの無かったクライマー達の最期を書き残した作品だ。
主に登山家に絞った形でまとめられている本作。
山に興味の無い人には、なぜ厳しく苦しい山に命を懸けて挑戦するのか理解できないだろう。
私自身も山は登らないし、未踏の地への憧れもない。でも、そこへ足を向けようとする人の気持ちは分かるような気がする。
偉そうなことを言うが、結局、何に挑戦するかはその人次第で、彼らはそれがたまたま「山」であり、「未踏の地」だっただけだ。
そう思って読んだなら、この作品は私の知らない世界で、夢を追った人達の記録にほかならず、それを伝えてくれる佐瀬さんには感謝の思いが芽生えてくる。
これがノンフィクションの「力」なんだろう。
普段からノンフィクションはあまり好まず、第一選択にはかからない。でも、話題になったものには都合良く好奇心が芽生え、それについて語るノンフィクションは時折手に取ることがある。
この「残された山靴」はまさにそんな本だった。
書店で手にしたのは、同じヤマケイ文庫の中の他の本だった。
通常の文庫本に比べ、少々割高なヤマケイ文庫。購入を目的に書店に行ったにもかかわらず、結局買わずに帰宅。しかし、昔から、私は1度逡巡を始めるとそれこそ堂々巡りだと自覚するまで迷いきる。
そして、何回かヤマケイ文庫を買うかどうか書店に行っては悩み、帰宅し…と繰り返し、やっと目的の本を購入。
あれほど、値段が高いと悩んだのに、買うとなったら、1冊ではもったいないと他の本も手に取った。
まぁ、近所の本屋はヤマケイ文庫なんて扱ってないから、そりゃあ、毎回遠出して悩んでたワケで…(^_^;
そして、せっかく来たのだからと手にしたのが、この「残された山靴」だった。
実際に8000mを越える14座の登頂に興味があって、調べた時は、まだ日本には1人も達成した人が居なかった。
でも、かなりの数を成功させている人はいた。ところが、そのほとんどが既に帰らぬ人になっていた。
登山の世界では注目されていたであろうその人達は、どんな思いで…と。
その後、「凍」を読んで、8000mに達していなくとも条件が悪くクライマーの踏破を拒む山がたくさん存在していることを知った。
だから、必然的に「残された山靴」は読みたい本と言うより、読むべき本になってたんだろうなぁ。
何度か書店で悩むうちに、この本も悩む対象になってたから…
本作に収められたクライマー達の足跡をまた読んでみたいと思った。
自分は山登りはしないけど、息子達のうちどちらかは登山家にならないかと思ってたくらいで…
なんでかなぁ(^^*)
山の世界を知る一歩になる本です。