警察小説以外にも著作があったとは…
恥ずかしながら、警察小説を書く小説家だと思い込んでた佐々木譲さんの歴史物を読みました!!
「獅子の城塞」佐々木譲著(新潮社)
以下、感想…
警察小説以外の最新刊である「獅子の城塞」…
歴史小説も書かれるのかと初めて知って、手に取った。
歴史小説と言えば、歴史に名を残す武将や武将でなくても、何かしら芸事なりを極めた人のお話かと思いきや、「石工」のお話。
確かに城を作ってる時代の話だから、石工が石積みをしなければ城はたたない。
でも、主人公は将来のために先進技術を学んでこいとヨーロッパに送られることになる名も無き庶民…
交通手段もままならず、通信手段などほぼ無いに等しい時代に、大きな夢と使命を託され、船に乗った戸波次郎左の「石工」としての一生。
ヨーロッパの覇権争いのために休まることのない戦争。彼は、闘いの戦略に大きな役割を果たす防塁としての城塞・城壁の築城技術を学び、闘いの最中で、その経験値を積んでいく。
そして、ヨーロッパ各地の石工達にもその腕と誠実な仕事ぶりが認められ、1人立派な親方として誰もが一目置く存在となっていく。
彼は、ヨーロッパの石工達のほとんどがみなたどるように築城仕事のあるところへと流れながら、生きていく。
その場、その場で仕事を納め、また新たに土地に向かう。
そうして、過ごした数十年のうちに時代は流れ、かつて、ヨーロッパ式の町を望んだ頭領・織田信長は死に、信長の仕事の後ならと次郎左の修行が終わる数年後を目途に築城を依頼していた当時の一大名であった徳川家康は、征夷大将軍となり、それこそ日本の頭領にまで駆け上がり、ヨーロッパ式などでなく、日本古来の建築で荘厳な江戸城・駿府城を築城してしまった。
いつか、徳川からの依頼がヨーロッパに届き、故郷「日の本」に帰らねばならなくなったら…
次郎左は何をするにもその事が頭のどこかにあったのだ。だから、弟子もとらず、親方にもならず、あくまでも親方衆の補佐役として現場で技を磨いてきた。
ところが、身を寄せるオランダで聞いた現在の日本の有り様に、彼の日本での仕事は無くなったと知るに至った。
なんと遠回りをしたことか…誠実で、真摯な彼の人となりが偲ばれるエピソードだ。
しかし、彼は幸せであったろう。
誰もが認める技術をその腕につけたのだから…
誰1人知る人の無い国にたどり着き、遠い夢を追いながら、彼の仕事に一生を捧げ、生き抜いたのだから…
NHKの大河ドラマもこういう名も無き人に焦点を当て、1年もダラダラ放送しないで、せめて2クールくらいで夢のあるフィクションをやってみたらどうだろう。
このお話は舞台がヨーロッパだし、戦下での場面が多いから、まず絶対に無理だろうけど、こういう希望溢れる大河ドラマを見たい!!
読み始めた最初は、築城術とか城の石積みの大変さとか、歴史の大きな流れの中ではあまり着目したことないから、今一つ面白さが分からなかったけど、ヨーロッパで次郎左が修行始めた辺りからは、ものすご〜く面白くなって、一気に読んでしまった(*^^)v
また、新たに好きなジャンル登場で、時間のあるとき次なる小説にもチャレンジしよ〜っと!!