初めて読んだ中町信さん。
朝日新聞の書評で、ずっと前だけど、ファンの方たちの要望で文庫が復刻されたという記事を読んだ記憶が…
「追憶の殺意」中町信著(創元推理文庫)
以下、感想…
中町信さんは2009年にお亡くなりなったと解説にある。
推理小説の王道たる密室トリックの謎解きを中心に話が展開していく本作は、中町信さんの初期の作品群の中の1冊だそうだ。
1970〜80年代に集中するその初期作品群が、その後タイトルを変え、創元推理文庫として発刊されたようだ。
確かに今のミステリーとは趣が異なる、まさに王道の「推理小説」だ。
「ミステリー」なんてカタカナで表現したくないほど、丁寧に事件と関係者を追っていく話の展開は、今時のミステリーに毒された私の頭には、むしろ新鮮さを感じてしまうほどだ。
事件の発生から、事件を追う刑事たちの動き、関係者たちの繋がりとそれらを結びつける背景…
それらがきっちりと丁寧に、ゆっくり過ぎるほど丁寧に書き起こされていく。
読者の側も1つ1つ納得しながら、事件解決への道筋を辿っていける。
中学、高校時代を推理小説ばかり読んで過ごしてた私には、なんだか懐かしいくらいの真っ当な推理小説だ。
携帯もメールも無い時代、科学捜査も今ほど一般に知られてなかった時代。
小説も事件の推移を事細かく提示していた。
だから、あれほど夢中になれたのだなぁと改めて思う。
こんな王道に触れるのも時には嬉しいものだ。