先頃のアカデミー賞で脚色賞を受賞した本作。ベネディクト・カンバーバッチ主演。私の大嫌いな(笑)女優キーラ・ナイトレイがヒロイン。
話題作だけあって、ホールにはたくさんの人が…
第二次大戦中、当時の技術では解読不可能と言われたナチス・ドイツの暗号エニグマ。
このエニグマが連合国側に解読されたことで、ドイツは一気に窮地に立たされ、敗戦への道をまっしぐらに。
そのくらいの話は知ってるけれど、その暗号解読にあたった人についてはまるで知らなかった。
大勢の英知を集めて解読したものと思っていたが、1人の天才が登場し、人と全く違うアプローチから暗号解読に行き着いたのだ。
しかし、暗号解読がドイツに知られてしまっては再び暗号を作り直され、彼らの努力が振り出しに戻ってしまう。
解読の成功は絶対に秘密にしなければならない。そのうえで、ドイツに気づかれないよう少しずつドイツの息の根を止めていく。
解読した後が大変なのだと言った主人公。ホントにその通りなんだ。
そして終戦後、彼らのチームは解散となり、彼らの存在は最初から無かった事になった。「無」になったのだ。
この度の戦争は終わったが、また、暗号解読が必要になった時、そのノウハウが他国に利用されないよう、彼らの存在も彼らの研究もその成果も全て無かった事に…
名も無き英雄…
主人公が無かったはずの過去を初めて語ったのが、この映画の設定。小さな取調べ室。わいせつ罪で身柄を拘束された彼は過去を調べられる。ところが戦時中の軍での任務について一切の情報が機密扱いに。
取り調べを担当した刑事は一切が機密の大学教授に罪状とは別の疑惑を感じ取る。
刑事のカンが、主人公に何か秘密があることを見抜いたのだ。
1度しか言わないと念をおされた教授の話は、にわかには信じ難いエニグマ解読のエピソードだった。さらにそれと平行して語られる彼の趣向。
ホントは国をあげて賞賛されて良いはずの偉業なのに。
それとは関係ない彼の個人的な問題が、彼の命を縮めてしまった。当時のイギリスでは同性愛がわいせつ罪とされていたためだ。
結局、死後何年も経ってやっとエリザベス女王は彼に特別な恩赦を与え、その名誉が回復されたのは2013年になってからだという文章が最後にスクリーンに。ホントについ最近のことだ。
彼の暗号解読機こそ、今やなくてはならないコンピューターの基礎となるものだったのに…
彼の偉業に比して、その最期はあまりに寂しい。
でも、こういう隠された大切な「過去」もしっかりと映像として記録していく映画って素晴らしい。
カンバーバッチさん、熱演でした。 風格すらあります。
第二次大戦の戦場ではない、ある側面を描いた映画。様々な隠されたエピソードが今もこうして発掘される。