今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

パリよ、永遠に


公開初日にヒュートラ有楽町にて鑑賞。


第二次大戦末期、八つ当たりとも言える「パリ破壊」の最終命令を下したヒトラー。その命令をめぐり、ドイツの将軍と中立国であるスウェーデン総領事とのギリギリの駆け引きを描いた作品。


このエピソードはかつて違う視点で映画化もされているらしい。「パリは燃えているか」というそのタイトルだけは聞いたことがある。


そして、こちらの「パリよ、永遠に」はほぼ同じ設定で、しかも同じ主演コンビで舞台化されていたものの映画化なのだそうだ。


確かに全編ほぼホテルの一室を舞台にしている設定からして舞台的‼


場面転換の少ない緊張感の強い作品だ。


戦争を描いた映画ではあるけれど、はるか彼方に時折銃声が聞こえる程度で、戦闘による緊迫感より、狂気の沙汰とも思えるパリ破壊を阻止することが出来るのか、そちらの緊張感の方が高い。


特にドラマチックな展開があるわけでも無いのに、妙に引き込まれる。


将軍と総領事との1対1の駆け引きは、ホテルの一室という密室で2人だけで展開するものだけれど、彼らの話し合いの結末には何万という人々の命がかかっている。


その命の重さを背負っての攻防だから、たがいの会話に緊張感が張り詰めている。


こうした会話劇で魅せ切るのは、脚本の力、俳優の力、さらには演出との相性、どれもが上手くマッチしないと全く緊張感の無い作品になってしまう。


その点、最後まで引き込まれたということはベストなバランスだったのだろう。


パリに生まれ育ったスウェーデン総領事は、破壊を回避するために、将軍にある提案をする。


ヒトラーの命令が既にこの戦争において、何物も生み出さないと知っている将軍は、その提案を受け入れ、破壊の中止を決める。


中止の決断を無線で部下に知らせる時、将軍は総領事を遠ざける。ドイツのために戦ってきたはずの将軍にとって、国の命令に背くことはどれほど大変なことだったか。たとえ、間違った命令でさえ、それを反故にするのは勇気がいったはずだ。


しかも、戦時下の混乱の中で、総領事が将軍との約束を守りきれる保証も無い。


それでも、断を下した。


映画はそこで終わるが、その後にエピソードが記される。


総領事は、将軍との約束を果たし、将軍の家族を無事脱出させた。パリ開放の英雄と称された総領事は、その記念品を実際の英断を下した将軍に送った。


こうしたエピソードは語り継がれるべきなのだろう。


みなが憧れるパリの町が、どのように守られたのか。皮肉なことに戦争の相手国であるドイツの将軍の決断によってなされたことなのだ。


自分の生まれ育った町を思う1人の勇気が、その決断を導き出した。


先日観た「イミテーション・ゲーム」がそうだったが、大戦後70年というこの時代になってさえも初めて紹介されるエピソードも多いようだ。それだけ多くの人を巻き込んで、多くの苦しみ、悲しみが生み出された戦争…


あらためて、振り返り、耳を傾けねばならないことがある。