車椅子のスティーヴン・ホーキング博士の若き頃を描く。
ホーキング博士を演じたエディ・レッドメインがアカデミー主演男優賞を受賞した作品。
予告編を観る限り、ホーキング博士が病気を発症し、余命宣告を受けたにも関わらず、2人は愛を貫き、過酷な状況の中で博士の論文発表など献身的に支えた妻の姿が印象的だった。
ここまでは浪花節大好きの日本人にぴったり(汗)多分、配給会社もそれを理解した上であの予告編だったのだろう。
しかし、現実はそう甘くない。
自ら、深刻な病に冒された男の妻の道を選びながら、結局貫き通すことが出来ず、違う道を探すことになる妻。
原作がその元妻によるものだそうで、映画本編も妻目線で話が進んでいく。
妻は自分の疲弊と心の変化を包み隠さず語ったのだろう。映画でもその部分は一応ちゃんと描かれる。
覚悟を決めて進んだ道とはいえ、壁にぶつかり苦悩することは誰にでも理解できる。
ところが、彼女の苦悩については描かれるけれど、その描写が浅く、正直言えば共感できるほどのものではない。
ホーキング博士が病気を発症する前から、小さな「サイン」があったことなどが細かく描かれているのに比べ、妻が追い詰められていく部分の描写があまりにあっさりとしている。
一応、本人ではなく、ホーキング博士の一番の親友ブライアンが博士を抱き上げて階段を登るシーンで彼女の苦労の一端を示す場面はあった。
ブライアンが「ジェーンはいつもこんなことをしてるのか。凄いな」というセリフで彼女の苦労を表現するが、本人の姿を見せてどれほど大変かというシーンはほとんど無い。
原作者である当人が自身の苦労と苦悩に誰も気づかなかったと暗に示しているのかなぁ…と勘繰ってしまった(汗)
これは元妻が本当の苦悩を表現することを躊躇ったのか、あるいは共に生きていくと選択したことに彼女なりの理由があったのか…
つまりね、「余命2年」と宣告されたからこそ、皆で支えあって生きていかねばならないと決意したのかと思って…
まさか、その後何十年も彼が生きていくことなど考えもしなかったのかと…
若さゆえの選択であったのかと…
なんだか、いろいろ考えちゃったけど、最終的に「お涙ちょうだい」的な人生の選択をしないところが、またこの2人の凄さなのかなと。
夫婦の現実は傍から見ている者には分からないから…なんだか、別の人生を歩むことになった女の方の言い訳を映画で見せられてるような気がして、素直にその世界に入れなかった。
最後に、主演男優賞を得るほどのエディ・レッドメインの熱演は確かに素晴らしい。
でも、そっくりさん大会ではないので、その描写はほどほどで良かったのではないかと。実在の人物を映画化すると必ずと言っていいほど、その内容や演技より「似てる・似てない」が先に立ってしまう。
話題作りにはなるだろうが…
もう少し、私にホーキング博士の理論を理解する力があれば、また面白さも違ってきたのかも(汗)そう感じてるのが私だけではないと思いたい(笑)
ある意味、恋愛映画であり、デートで観るのに良いかも。
厳しい現実も描かれるけど、思うほどハードじゃないので(笑)