今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

マークスの山(講談社文庫版)


先日、久方ぶりに読んだ高村薫さんの著作「冷血」


40代になり、捜査一課・特殊犯4係の係長になった合田雄一郎の活躍と心の移ろいをじっくりと読んだ。


そして、この寡作の作家に「冷血」の文庫化をすぐに求めるのは無理だと承知している私は、ふと合田雄一郎の活躍を再び読み直してみようと思い立った。


かつて、単行本で読んだ本作を、おそらく文庫化にあたって、大いに加筆修正されたであろう新しい「マークスの山」を読んでみようと…


マークスの山(講談社文庫版)」高村薫著(講談社文庫)


以下、感想。


















「冷血」で久しぶりに出会った合田雄一郎は、すでに捜査の第一線で足を使って、各所を走り回る年齢はとうに過ぎていた。


そんな「現在」の彼が、初めて皆の目の前に登場したのは、彼が33歳の時。大学卒業後、父の勤めた警察に入庁し、捜査畑を10年走り抜いてきた頃だった。


同年代の叩き上げの刑事の中では、30代初めに警部補になり、本庁捜査一課で主任となった彼は当然ながら、出世頭である。


そういった自負が時折り頭をもたげるワケではないが、彼は当時230はいたと思われる捜査一課にあっても、その存在は一目置かれていたはずだ。


ところが、当人は事件に没頭してしまえば、その他のことは一切合切胸に収め、ひたすら地味に頑なに事件を追い続ける。


そうした、彼のバックボーンと彼の所属する捜査一課強行犯7係の面々との丁々発止のやり取り、さらには彼個人の警察とは関係ない生活のエピソードを事件と並行して描く本作。


都内で発生した殺人事件。出所後間もない男が、土地勘のまるでない街で脳天に一撃で穴を開けられ、殺される。


かつての繋がりによるものなのか、見たこともない凶器による傷の形状に捜査陣は迷走する。


合田雄一郎が折々に足を運んだ「山」がこの小説の大きなポイントになる。


「山」で起きた3つの事件が時を経て、1つに集約されていく。


その過程で起きる殺人事件や関係者の自殺。


都内の各署を巻き込み、繰り広げられる捜査の先陣の取り合いや仲間内の妨害。もう、刑事たちが人間臭くてたまりません。


特に犯人の特定が出来た辺りは、登場人物たちの躍動感たるや凄まじいです。


単なる警察小説とは趣を異にする。合田雄一郎がなんとも人間らしく描かれていて、彼のファンがいるのも頷けるってもんだ‼


ヘビーな事件の連続の中、小説を読む者には事件の大まかな輪郭は次々と判明していくけれど、当の合田雄一郎をはじめとする登場人物は、それぞれの範囲で事件の真相に迫っていくわけで、その先取り目線で、彼らがどうやって解決の糸口にたどり着くのか、楽しみで仕方なかった。


やっぱり、面白い。


続く「照柿」と「レディ・ジョーカー」も、まだ文庫では読んでいないので、読んでみるかな‼