警察小説ばかり読んでるから、今回もそうなのかと思ったら、全然違った(•́ε•̀;ก)💦
以下、感想…
20年前に突然姿を消した父。1週間後、父の居所を知らせてきたのは北海道の父が学生時代を過ごした町の警察だった。
寡黙であまり笑わない父。当時まだ、12歳だった主人公は、父との思い出もほとんど無かった。父の遺体を引取りに現地に出向いたのは母で、彼女も父親と同じ大学を卒業しているが、東京に戻ってからそれまでと様子が変わっていた。
その母は父がなぜあの街で死んだのかを結局主人公に語ることなく息を引き取った。
自分にも交際する女性ができ、将来のことを考える時期になった彼は父と母が青春時代を過ごし、父の最期を知る町に旅したいと考えるようになった。
本の見返し部分に物語の舞台となる「運河町」の街路図が書かれている。
主人公が父の姿を求めて人を訪ね歩く時の行程が細かく描写されていて、読みながら街路図を確認していくと街の様子が見えてくるようだ。
主人公が訪ねた人々は父の置かれた立場を一部分しか知らず、それらを1つ1つまとめながら、さらなら出会いを重ねていく。
すっかり近代化された都市から置いていかれてしまったような運河町の様子。石造りの建物が整然と並ぶ街を歩きながら、主人公はこの街に住む将来を考え始める。
父の学生時代の真実、そこで起きた事件、父が抱えた心の傷、そして、運河で水死体として発見されるに至るまでの父が運河町で何をしていたのか。
主人公は全てを知る。何の理由も伝えず消えた父にずっと捨てられたと思い込んで成長してきた彼がそのわだかまりを捨て去り、父が最期を迎えた街で暮らそうと思い至る。
街の描写自体がファンタジーだ。そこで生きる人々にはちゃんと実体があり、しっかりと人生を重ねているのに、運河町にはなんだか人のあずかり知らぬ力が働くようだ。
まるで、街が生きているみたい。街に暮らす人々はまるで呑み込まれてしまったみたい。繊細な心の持ち主であればあるほど、街で大きく心を揺さぶられ、その後の人生に大きな影が落ちるかのようだ。
なんだか、不思議な小説だった。
小さな時に急に姿を消し、亡くなった父。その最後の足跡を辿る旅。郷愁漂う石造りの街は、父の生きた頃のままの姿でそこにある。
過去を辿る旅に街の風景も呼応してるかのような、そんな不思議な印象。
主人公が父の足跡を辿る際、結構執拗に調べ、尋ねる。昔、真保裕一さんの小説によく出てきたお役人の素人探偵みたいな主人公たちを思い起こさせた。ちょっと引く。だから、主人公に共感できない(•́ε•̀;ก)💦
父の秘密を探る旅とはいえ、けしてサスペンスではありません。