今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男


試写にて鑑賞。


良いテーマだと思うけど、かつてハリウッドの最前線から追われた脚本家の実話だから、やっぱり地味な映画だ。


それでも、時折起こる試写会終わりの拍手がいつにも増して大きかった。


満足度の高い映画だ。


そして、この映画を観て、ジョン・ウェインを嫌いになる人が出てくるだろう(笑)何を隠そう、私もその1人(汗)元々ジョン・ウェインは好きじゃないんだけどねぇ。


日本の映画界にも「赤狩り」があったと聞いたことがある。


世界の映画を牽引していたハリウッドなら、その状況は日本の非じゃないだろう。


当時の共産党員への弾圧は度を越していた。確かに現在の世界を見ても、特に東欧諸国など東側の国々は結局「理想」にがんじがらめになり、絡め取られてしまった。


しかし、それは現在のことで、米ソ冷戦下の元で「共産主義」を叫ぶ事は許されなかった。


映画製作の現場にあって、成功による報酬はその殆どが監督の手に渡り、現場のスタッフには雀の涙ほどの賃金しか払われないという現状だったらしい。


そうなれば、現場の人々は自分たちの仕事に自負があればあるほど、声をあげていく。それが組合活動になり、最終的に共産党に結びついていった。


新聞紙上で多くの読者を持つ女性コラムニストは過激な反共アピールをする。世の中は過剰に反応し、俳優の組合も反共の度合いを増し、語り合って、それぞれの立場を理解する努力を棚上げにする。


こうしたなかで、トランボは投獄される。トランボと同じ道を歩む者もいれば、仕事を取り上げられ、止むに止まれず寝返る者も出てくる。


かつて、仲間として共に作品を作り上げた人々が裏切ったり、遠ざけたり…


彼ら本人だけでなく、家族をも巻き込んで辛く暗い道を進むことになる。


そうしたなかでも、「反共」を旗印に過激に弾圧を企てる業界側に頓着しない人々も現れる。そこが芸術の世界なんだなぁ。この映画観た人はカーク・ダグラスは素晴らしいって言いそう。私もその1人(笑)


良いものは良いのだ。その人が主義主張を堂々と掲げられるのが自由の国アメリカだ。何も共産主義に入れ込んで、アメリカの転覆を狙ってるわけでもなかったろう。


自分たちの「仕事」をしっかりと認めて、それ相応の待遇を求めただけじゃなかったのか。


それが、冷戦下という時代の影響を受け、極端な形で反目し合う人々が登場してしまったようだ。


弾圧を繰り返す人々に堂々と対峙していたトランボも実はかなり追い詰められていた。それは家族たちとの危機ともなった。


それでも、トランボの妻の献身で、互いに最後まで助け合った一家は危機を乗り越える。時代に翻弄された家族の物語なのだ。


華やかな世界を二分した暗い時代。ある意味「黒い歴史」。それを堂々と映画化するハリウッドの懐の深さは恐れ入るし、それを忘れてはいけない時代として捉えているということの証でもあるのかな?


トランボがそれまで使っていた偽名を捨て、トランボとして、インタビューに答えた実際の映像がエンドロールで流れる。


物心ついた頃から、父親が弾圧されていた娘についてのトランボの言葉が強く胸をうつ。


この映画、エンドロールも見応えあります*´▽`)b