今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ブルックリン


ブルックリンという地名(正確にはよく知らない…汗)がタイトルになってるんだから、ラストで彼女の選択がどこになるかは分かりそうなものなのに、私ったら、最後までドキドキしていましました(^▽^;)


アイルランドのある街。小さな街で仕事も無く、生きていくのが難しい。生きるために海を渡る人々。


大国アメリカに夢を追うわけでなく、生きるために、新しい居場所を探すために、仕方なく船に乗る…


主人公もそんな1人。父親が死んだ後、母と姉との3人暮らし。優秀な能力を活かし、簿記係として働く姉は職場の信頼も篤く、趣味のゴルフを通じて多くの街の人々と繋がっていた。


だからこそ、力がありながらも仕事に恵まれず、口うるさい街の雑貨屋で週に1~2度の店番をする妹が不憫でならなかったのだろう。


姉はアメリカでアイルランドからの移民を支援している神父のツテを頼りに妹の渡航を後押しする。


閉鎖的で因習に囚われた街で人目を気にしながら暮らすより、前途は多難だけれど、広く大きな空の元で暮らす未来を妹に与えた。


何もかも新しい暮らし。神父が手配してくれた寮で同じ境遇の女性たちと暮らし、ブルックリンのデパートで働く主人公。


同じアイルランド出身者たちが集まるダンスパーティへ出かけ、少しずつ新しい世界に順応していく。


神父の計らいで夜間大学で男子学生に混ざって簿記を学ぶ。


新しい世界で新しい出会いを得て、将来を語り合える男性と巡り会う。イタリア系の移民である彼と真剣に付き合いだした矢先、故郷から突然の訃報が届く。


彼女をアメリカに送り出してくれた姉が亡くなったのだ。かねてから病気を抱えており、誰にも言わずにいたのだが、おそらく覚悟は出来ていたのだろう。だからこそ、妹を後押しをした。


その思いを感じながらも、1人残された母を慰めるためにアイルランドへ帰郷する。


海を渡る旅の先に確たる未来はあるのか。必ず戻ると約束する代わりに彼女は恋人と2人だけで結婚の届けを出す。


そして、帰った故郷で、母が彼女を待ちわびていたことを知る。簿記の資格を取った彼女は急逝した姉に代わり、当然のように仕事を任される。


さらに親友は自分の結婚相手の友人男性を彼女に紹介する。


アメリカに帰る…アメリカに待っている人がいる…そう思いながらも、姉を喪失した母や友人知人が自分を求めている現状を振り切ることも出来ない。


遠く離れているからこそ、迷う。アメリカに行く前とでは彼女を取り巻く状況が変化したことで、さらに悩む。


でも、彼女は思い出す。姉の後押しがあったとはいえ、なぜ故郷を飛び出したのかを。


彼女がアメリカで結婚の届けを出した時、たまたま夫が知り合ったアイルランド出身の男性。その妻がアイルランドの同じ街の出身だった。


世間は広いようで狭い。どれほど自分が偉いのか、選民意識に囚われた雑貨屋のばあさんがその話を耳にしていた。


アメリカでイタリア系の名前になったことを知っているとまるで脅すように口にするばあさん。


そこで、主人公は現実に引き戻される。姉を失ったばかりの母が彼女の都合などお構い無しにあれこれ未来を夢想することで、なんとか立ち直ろうとしていた。その姿に本当のことを言えなくなっていた主人公。


しかし、自分で見つけ出した自分の居場所に戻る決心をする。


アメリカにいる間に忘れていた故郷の街の素晴らしさを久しぶりの帰郷で思い出した主人公。けれど、あのばあさんのやり方に触れ、素晴らしさをもはねとばすほどの閉鎖的な街の窮屈さも思い出した。


私、彼女ほどグローバルじゃないけど、少し気持ちが分かるんだよね。私は東京のとある下町の出身。その家で何かあれば、翌日には町内の人がみんな知ってる…少しでも目立つことをすれば、いいように言い立てられる。息をすることも苦しい閉鎖的な町。


地元の高校には絶対に行きたくなかったし、地元の同級生が高卒で就職したり、専門学校に行くのとは別な道を行きたかった。


当時、町内で女子大でもなく、短大でもなく、普通の大学に進む女子はほとんどいなかった。


だから、総合大学(今でもこんな言い方は残ってるのかな?)の法学部に進んだ。別に弁護士になるつもりなんて無いし、だいたい私の大学から弁護士は無理だし(•́ε•̀;ก)💦ツブシが利くってやつね


それでも、「女のくせに」とか「女に学があって、何の得になる」とか散々言われた。


だから、結婚する時、絶対にこの町には戻らないと決めた。実家はあるから、たまに両親の顔を見には行くけどね(^ω^;)


確かにいいところもあるんだけど、それはたまに行くからで、ずっといると苦しい。


主人公を取り巻く環境は別次元だけど、なんとなく理解できるなぁと。


背筋を伸ばし、自分の居場所を見つけ、自分の足で帰ってきた主人公。あの時代、アメリカにはこんな人が多くいたんだろう。もちろん、困難を極めた生活の中で道を失う人もあったろうが…


シアーシャ・ローナンの瞳が力強くて、とても良かった。