今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

エル・クラン


試写にて鑑賞。アルゼンチン映画。本国で300万人鑑賞の大ヒット。アルゼンチン映画と言えば、「瞳の奥の秘密」。あれはなかなか暗くて重くて、印象深い映画でした。ハリウッド・リメイクもされました‼


さぁ〜て、この度はどんなお話やら…


80年代にアルゼンチンで起きた誘拐事件を題材にした最近流行りの実話映画。そして、現実は小説より奇なりを地で行く映画です。


実はこの日、終映後にトークショーがありました。そこで映画ライターの人のお話が映画理解に役立ちました。


というのも、映画の時代背景はアルゼンチンが長い戦いの末、それまでの独裁国家から民主国家へと変貌を遂げた頃なんだそうな。


主人公のおじさんはかつて独裁国家では情報局に属し、ここはいわゆる秘密警察で、自分たちに都合の悪い人々を拉致し、拷問し、死に至らしめても寧ろ良い仕事をしたと認識される職場だそうだ。


つまり、それまでの社会が崩壊し、それまでの常識が非常識になってしまった(正しくは、正常に戻った)日常の中で、おじさんだけは頭の切り替えが出来ず、と言うか切り替えの必要性を認識できず、仕事として金を貰い、名誉を得た拉致監禁をそのまま新しい時代の自分の「仕事」として続けたのだ。


おじさん1人では当然ながら、大の大人を誘拐出来ない。だから、かつての仲間や息子たちを巻き込んで、しかも自宅に監禁しては身代金を要求する電話をかけ続けた。その身代金のおかげで、富裕層の仲間入りをしてたのだから、恐れ入る。


監禁した被害者の叫び声が外に漏れぬよう、家では大音量の音楽を流し、被害者が餓死しない程度に食べ物を与え、町の公衆電話で警戒心の欠片も無い無頓着さで身代金要求の電話をかける。


最初は頭がおかしいのかと思った。でも、違うんだね。ずっと、彼が仕事としてやってきたことをそのまま続けただけなんだ。ただ、国の了解を得てするものとそうでないのでは結果が大違い。


そこに気づいてるのか、気づいてないのか。我が道を行くおじさんの顔立ちは妙に端正でとても誘拐犯とは思えない。でも、目がおかしいのだ。何を見てるのか、どこに焦点を当ててるのか分からないような目をしている。


彼は自分の正義を押し通す。協力しない家族は裏切り者であり、反抗的な被害者をおとなしくするために命を奪っても、それは自分のせいではなくて、彼は全く悪くないのだ。


こんな普通じゃないおじさんと家族の顛末。映画のラストで家族はみな拘束されるが、その後の彼らについては文章が…


本編も十分突飛な実話だったけど、その後の人生はさらに凄かった。そっちを映画化したら、2時間じゃ納まらないね(笑)それは観てのお楽しみ(^▽^;)


お話の内容とは違うけど、「音」が特徴的な映画だった。前にも書いたけど、声が漏れるのを防ぐ大音量の音楽が軽快な音楽で、バックに流れるのも犯罪映画らしからぬロックな感じ。そして、家の立付けが悪いのかと思うほど、全編において足音が響く。この「音」は面白いと思った。


まだまだ日本で公開されるアルゼンチン映画が少ないこともあるだろうが、今は注目度の高い同じ作り手の作品が続くせいで、その独特の色合いがアルゼンチン映画の持つ独特の色合いと同じなのか、今一つわからないけど、少なくとも面白い映画を送り出す土壌があるようだ。


注目度が高くなれば、もっといろんな映画が公開されるようになるだろし、楽しみが増える(ง •̀_•́)ง