岩波ホールでの公開。キム・セロンが一躍脚光を浴びるきっかけとなった「冬の小鳥」の監督ルニー・ウコント女史(名前あってると思うが…汗)の作品。
「冬の小鳥」で韓国からフランスに養子に行く少女を描き、監督の子供時代をモチーフにした作品だと広く知られている。
本作も養子である女性が主人公。特に養父母との関係は描かれていないが、引っ越したばかりの主人公の生活を心配して、養母が何度か電話をしてくる場面が描かれる。どちらかと言えば、養母の電話を快くは思っていないようだ。
主人公は、理学療法士。手に職があるので、新しい土地での生活も順調な滑り出し。彼女は、最近心がすれ違い気味の夫を残し、小学生の息子と2人で海に近い町に暮らす。その町は、主人公が産まれ、預けられた施設のある町だ。
30歳になった彼女は養父母の了解を得て、その土地で実母を探すことにしたのだ。
養父母との関係がことさら悪かったわけでは無いようだし、いったい何が彼女を突き動かしたのか、本編では今一つ分かりにくい。
匿名で出産し、養子に出した実母は担当の役所にはその名も届けているはずだ。その点を主人公は執拗に役所に確認する。しかし、役所の方もそこはプロ。実母との約束を守り、あくまでも秘密厳守。
そうした役所の姿勢に怒りをあらわにする主人公。
実母を探し、何をしたいのか。実母に何を求めているのか。その辺りを共感できないと宣伝文句にあるような感動作というのはちょっと難しいかな。
最終的に実母がすごく近いところにいて、普段から接点があり、自分の思うような人物では無かったことから、主人公は急に投げやりになる。
その辺も分からないんだよね。自分には考えも及ばない30年前の事情に思いをはせる事は無かったのだろうか。
終盤、主人公は実母を突然訪ね、挑むような目をして真実を語らせる。自分の知りたいことだけを聞き、相手の都合など聞く耳を持たない。
ラストで、実母と穏やかな時間を過ごすが、それも永遠ではない。実母を探すためにやってきたその町での生活を切り上げるつもりだと主人公は語る。
なんだかなぁ。
実母と主人公の間には、進む道もなく、引く道もない。人生を諦めてしまったような実母の薄い笑顔は主人公の求める母親の笑顔ではなかったんだろうな。
途中、主人公の意思はどこへ向かうのかと思うほど、淡々と描かれていた。
簡単に感動作とは言えない。そういう映画だ。