今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

幸せなひとりぼっち


北欧のサスペンス・ドラマに秀作が多いのは最近のWOWOWのプログラムを見ても納得で、今回はそれとは真逆のスリルもサスペンスも無いどちらかと言えば、ホームドラマの系統。


さて、映画はどんな感じかな?


北欧スウェーデンでも、融通のきかない頑固な人はいるワケで、頑固オヤジはお江戸の代名詞なだけじゃありません。


郊外の住宅団地に1人で暮らすおじいちゃん。と言っても主人公のおじいちゃんは59歳。まだまだ若い。ところが、43年真面目に勤めた会社から突然リストラされてしまう。


数年前に病気で亡くなった最愛の妻の写真が飾られている部屋で、おじいちゃんは1人考える。仕事も失った以上、彼が生きてる理由はないと…


家や電話の契約を打ち切り、冷蔵庫の中味を整理し、スーツにネクタイを着用し、彼は天井にロープを垂らす。


妻の元へいよいよ旅立とうとしたその時、隣の家に引っ越しの車が入ってくる。


住宅団地内は車は禁止のはずなのに、なぜだ。ルールを守らないヤツは許せない。おじいちゃんは首に食い込んだロープを外し、新参者に小言を言いに飛び出していく。


こうして、隣に越してきた家族となんやかんやと関わるうちにおじいちゃんは何度も死への旅立ちを邪魔されてしまう。


それまでのかたくななおじいちゃんの心を和らげていく隣家の家族。


何も知らない新参者に暮らしのルールを語り、おじいちゃんのこれまでの人生を語る。


劇中、おじいちゃんが自殺を試みて、死がすぐそこまでくる度に、若かりし頃のおじいちゃんの生活が走馬灯のように蘇る。


観てる側はそのおかげでおじいちゃんの来し方を知るわけだが、結局、おじいちゃんは死にきれない。それどころか、いつまでたっても手のかかる隣人の世話と行く宛の無い野良猫が住みつき、ゲイだとカミングアウトして家を追い出された青年に部屋を貸すことに…


おじいちゃんは細かいことをあれこれ言ううるさい人だが、その地区には代わりのきかないなくてはならぬ存在なのだ。


こうして、1人淋しく、地区内の点検、見回りと妻の墓参りが日課だったおじいちゃんに忙しい日々がまた戻ってくる。


長年のライバルであり、友人だった男が病気で車椅子生活になってしまい、すっかり疎遠だったのだが、悪徳介護業者に無理やり施設に収容されそうになっているのを知ったおじいちゃんは街の人たちと協力して追い払う。


隣に越してきた外国人の若い夫婦がひとりぼっちの淋しさを癒し、ひとりぼっちの幸せをもたらしてくれた。


すっかり、おじいちゃんには死ぬ気はなくなり、いよいよ頑張ろうとしてた矢先、お呼びがかかる。人生とはなんと皮肉なものだろう。


でも、一時でも、人とかかわりをもって人生を楽しむ時間をもてたのだから、確かに幸せだったのだろうな。


頑固オヤジに偏屈ばあさんを題材にしたお話はどこの国でも通じるんだろう。他所でも観たような話だけれど、暖かい気持ちになれるのだから、いいじゃないか!!