今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

しあわせな人生の選択


肺がんに冒され、1年続けた化学療法にも既に期待ができなくなった舞台俳優の男。彼は自分の最期に向けて、少しずつ準備を始める。


遠くカナダに暮らす親友が彼との最後の時間を過ごすためにはるばるやってくる。


「死」を見据えた話だけど、湿っぽい雰囲気はなく、積極的な治療を打ち切っただけで、まだ寝込むことも無く、普通に舞台に立ち、普通に暮らす。


自分の足で歩き、自分の口で喋る。まだ元気なうちに長年連れ添った老犬の里親探しに奔走し、離婚した妻と共にいる、今は留学中の息子を訪ねる。


主人公のそばで、彼の言うがままに付き合う友人。なんと、優しいのか。穏やかなその顔にはるばる海を越えてやってきて親友との最後の時間を過ごすという悲しい緊張感は全く見えない。


でも、それはその思いを共有できる人間がそばにいないからだったんだと最後の晩に分かる。人の死を語る割には普通にのどかに流れていくこの映画がなぜ「R15+」なのかが分かるのもそこなんだけど。


確かに親友の心の内を知る大切な場面ではあるけど、サラッと軽やかに旅立ちを語るのかと思ってた最後にこんなの…私はちょっと引いたかな(・・;)


ラストの犬の里親探しの決着には拍手。どこまでも親友を振り回す主人公だけど、そこには誰よりも深い愛と信頼があるだと感じるラストはとても良かった。


淡々と流れていく最後の旅の風景。こんな風に自分も自力で準備のできる最後を送れるかな。