今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

草原に黄色い花を見つける


ベトナム映画を試写にて鑑賞。あらためて「ベトナム映画」と言われると、見たことあったかなぁと思う。ベトナムを舞台にした映画を観たことはあっても。。。


まわりを田畑に囲まれた田園風景が続く田舎の村で暮らす兄弟が描かれる。兄は学校に通う年齢だが、弟はまだ学齢に達していないらしい。毎日、兄の帰りを「小さいおじさん」と名付けたヒキガエルと一緒に心待ちにしている。


そんな可愛い弟に対して、学校に通い、少し世間を知る年齢になった兄は、なんでも正々堂々と受け入れることが出来なくなっている。それがオープニングの「石投げ」遊びだ。私から言わせたら、遊びと言うには甚だ危険。


農業を中心とした村の人々の生活は天候に大きく左右され、けして裕福な暮らしではない。それでも、地域の人々と肩を寄せ合い、助け合いながら、逞しく生きている。


そんな彼らの日常に視点を置くこの映画は、まるで私たちが育ってきた子供時代を見るようだ。厳密に言うと、私たち中年よりちょっと上の世代の人が観たら、懐かしく感じるかもしれない。ビー玉の遊びなんか、まさに!!


すでに忘れてしまった心の片隅に追いやられていた郷愁。そんな感じだ。


兄は同じクラスの少女ムーンが気になっている。それはムーンも同じ。小さな頃から互いに行き来があり、よく知っているが、思春期を迎えようとする彼らにとって、昔のようにただ仲良くすることが難しい。大人が見ると微笑ましく感じる2人の風景。


ムーンには人には話せない悩みがあって、それが原因で懇意にしていた彼らの家でムーンを一時預かることになった。そこから、兄の気持ちが揺らいでいく。はっきりと気持ちを自覚ながら、ちゃんと本人に向き合えない。そうこうするうちに疑心暗鬼に囚われる。


ここからは、ファンタジーの世界に舞台は一変するが、そうせざるを得なかった人々の悲しさを兄弟は知っていく。大人になっていく過程。でも、なんとか無事に山を乗り越えられて良かった。


兄の気持ちは痛いほど伝わってくるけれど、それを認めることは出来ない。純真な弟へ向けられた誤った敵意を認めることは出来ない。それでも、弟の心の広さに涙が誘われる。


どこまでも続く田園風景とその自然と生きる中で培われた子供たちの心の美しさに言葉がありきたりで申し訳ないけど、感動した。