今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ダンケルク


今や完全に映画の感想記録のみになってしまったこの日記。しかも、最近は自分の身の回りの様々な変化のために生活サイクル自体が変わり、劇場へ足を運ぶことがすっかり少なくなってしまいました(涙)


映画は、とっても観たいんだけどね。時間的にね。。。


と言うわけで、久しぶりの映画館。これだけはちゃんと観ないとね。そうです、そうです。「ダンケルク」です。


IMAX上映を薦めるレビューをやたらと見ましたが、IMAX劇場は少ないし、1番行きやすいTOHOシネマズ新宿のIMAXスクリーンはチケットのハケも速くて、ギリギリまで予定が立たない私にはとても手が出せない。


と言うわけで、TOHOシネマズ日本橋のTCXで手を打つことに(汗)大スクリーンが良いのは分かってますが、それでも十分楽しめました。


そして、様々なレビューを見ていたけど、そこにあまり語られていないある大事な視点。それを事前に読売新聞の映画評欄で読んでたので、混乱せずに済んだことをここに記します。


いつものようにいきなり、この映画を観てたら、多分混乱に追いついていかなかったと思うのです。これ、とっても大事!


この映画は字幕でそれぞれのシーンの最初に示されますが、陸、海、空のそれぞれの視点で描かれていきます。脱出のためダンケルクに集められた若い兵士の視点でダンケルクでの作戦の一部始終を、海では救助に向かう民間船の船長の視点でその1日の始まりから、限られた支援の一環として派遣される空軍の最新鋭機を操るパイロットの視点で作戦の最後の1時間を。


時間軸が違うので、陸、海、空と場面が変わる度にそれぞれの時間が流れていく。そして、最後のパイロットの登場で、それぞれの時間が折り重なっていく。


普通なら「回想」として描かれる場面が、今回の実験的とさえ思える構成の妙で、1度もそれぞれの登場人物達が回想すること無く、時間の交錯する場面によって、それぞれの繋がりが掴めていく。「あぁ、あそこの」とか「あぁ、ここに」とか。。。


映画評欄のヒントのおかげで、こうした時間の流れに混乱せずに済んだのは、ホントにありがたかった。このくらいの示唆はあっても良いと思うけどね。何でもかんでもネタバレ禁止とか言わずに。。。


陸の兵士たちに遠慮無く打ち込まれるドイツ軍の銃弾。陸の視点の持ち主、若い兵士はただ生き延びたいという思いで、必死に頭を巡らす。名も知らぬ兵士と力を合わせ、難局を生き抜いていく。


彼らの苦境を知り、大人の始めた戦争で若い命が失われることにどうしようもない怒りを感じる接収船の船長は海軍に委ねるのではなく、自ら海に漕ぎ出す。


ダンケルクに追い詰められた40万の兵士を助け出す具体的な方途も無く、イギリス首相チャーチルはその1割でも助けられればと消極的だ。というより、今後の戦局を睨み、余計な戦力を割こうとしない。この見捨てられたような兵士たちに希望を与える役目を担ったのは対岸から発進した3機の戦闘機。


40万人を救うのに3機。。。


その後、この作戦ではチャーチルの目算を大きく上回る35万人が助け出されたという。まさに「ダンケルクの奇跡」と今でもイギリス国民達の誇りとなっているらしい。


その作戦の当事者達を描いた本作。銃弾に晒され、海に投げ出され、多くの仲間が犠牲となるなか、奇跡的に助け出された多くの兵士たち。こうした奇跡を声高に讃えるのではなく、淡々と描き続ける。


そして、その陰で、作戦遂行のため、最後の防御戦を守り、居残った多くの兵士、ドイツ機を撃ち落とすために敵領に不時着したパイロット、作戦遂行の指揮を執り、最後まで見送った士官、救助活動の最中に命を落とした青年など、多くの犠牲があったことも同じトーンで描かれていく。


戦場にとてつもないヒーローなどいない。生き残る者、命を落とす者、それぞれに物語があり、紙一重のギリギリのところで、行き先が決まる。そういった現実を淡々と見せつけられる。


ラスト、ドイツ軍に押さえられた浜に不時着したパイロットが自分の愛機を燃やす。自分の命運を知り、為べきことを為す、戦場でのルールだ。冷静に自分のすべき行動を取り、胸を張る。そして、ドイツ軍の兵士に囲まれたトム・ハーディがいつものカッコ良さで、そこだけは映画だなって思ったけど(汗)


声高に戦争の恐ろしさを語る映画ではないけれど、銃弾に晒される兵士たちを見れば、十分に伝わってくる。敵味方の銃弾が飛び交う戦場が登場するワケではないが、その恐ろしさには背筋が凍る。


私達が観てきた戦争映画とは違う形の作品が登場したということだ。


ぜひ、劇場で。。。戦闘機の舞うシーンはスクリーンで観ないと。