今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

満願


やっと読めた。途中まで読んでたことすら、すっかり忘れてたと同時にあの不愉快な思いが戻ってくる。


諸々財政難の折、本来は買って読まなきゃいけないと分かっていても図書館を利用する私(涙)。膨大な予約数をカウントする本書をやっと手にした時、たまたま雑事が重なり、落ち着いて読書をしてるヒマが無かった…


期限内に読み切れるか微妙なところだった。無理を承知で、期限が4日残ってる段階で他の本の返却ついでに図書館に寄った。


念のため、再貸し出しが可能かどうか問い合わせた私に「予約が入って無ければ、可能です。本を見せて下さい」となんだか偉そうに喋るカウンターの職員。


言われたとおり、差し出すとピッとスキャンしたかと思うと「次の予約が入ってるのでダメですね」とカウンター内の返却ボックスに放り込んでしまった。


私は呆気に取られ、カウンター前に立ち尽くす。すると、その職員、私にそこを退くようにと手ではらった後「次の方どうぞ」と。


まだ貸出期間が残っていることも伝え、念のための確認だと伝え、それで手渡したのに。まだ貸出期間が残ってるのだから、延長は出来ないと答えて私に本を戻すべきもの。


区の職員が図書館を運営してた頃は「あと4日あるから読めるとこまで頑張ってみたら?」などと言葉を添えて本を戻してくれた。その意識がこちらにもあったのがいけないのか。


そろいのエプロンをした委託業者がカウンターに就くようになってから、優しさの欠片も無い職員が増えた。


文句を言おうにも、呆気に取られて、臆してしまった私の一歩が遅れ、当の職員はバックヤードに引っ込んでしまい、カウンターは無人に。


本を扱う人がこんな人。。。しばらくは怖くてその図書館に寄れずにいた。1年半ぶりくらいに長いこと待った予約本が届き、久しぶりに出かけた図書館。ずいぶんスタッフの仕事ぶりが変わっていた。みんなキビキビと動き、問い合わせにも親切に答えていた。


あぁ、良かった。そう思った瞬間、小学生に上から目線で物を言う職員がカウンターに座っていた。あの女だ。。。「身分証明が必要なのっ。だから〜、今は貸せない。分かる?」そんな声が聞こえてきた。


その職員は私の時も、今回も名札の上からカーディガンを羽織り、名前が分からない。他の職員は、みな羽織った物の上に付けている。あぁ、この女は問題職員なんだと分かった。様々な苦情が寄せられ、他の職員は自分のこととして捉えて、姿勢を正したんだろう。でも、元凶には全く届いていない。そんな現実を見せつけられた。


活字離れが問題視される昨今、図書館で本を借りようという小学生はどんどん少なくだろう。それを暖かく迎えられない職員がいる。私の街も終わりだな。。。そう思った。


「次の人」って言われて、私の番になった。あの女に対応されるのは絶対イヤ。他の職員は立って迎えてくれるが、彼女は椅子に座ったままだ。タッチの差で別な職員の列になった。あぁ、良かった。横でその女職員は相変わらず、偉そうに対応してる。


そんな苦々しい思いをして借り出した本作。さて、感想。。。


「満願」米澤穂信著(新潮社)





















やっぱり、米澤穂信さんは短編が良い。どれもスッキリまとまっていて、とても1時間ドラマとは思えない「相棒」のような絞まった作品が多い作家さんだ。


本書のタイトルになっている「満願」を初めとして、一連の事実の本当の意味を探るお話が並んでいる。敢えて、その観点で編集されたのかもしれない。


事実として起きた事件や事象の背景を辿っていくと、とんでもなく恐ろしい「意思」が隠されているという。。。


発刊当時、テレビでも多くの人が傑作と言ってた「満願」。満を持して、最終章に登場だ。まさに満願叶った女性の真実に迫る話だ。


可能な限り、最低限の辻褄を合わせれば話には無理が生じない。そんな微妙なところを進んでいく展開で、登場人物たちのバックボーンを事細かく書き込まないから、いろんな想像が可能だ。結末に向かう道中の小さなエピソードなどが全て伏線となり得る。どこの部分が結末に辿り着くのか、とこが回収されるのか、人間の闇を語るお話なのに、そんな手法の妙が楽しみで仕方ない展開。


突発的な事件や環境の変化。それをきっかけにそら恐ろしい発想をする登場人物たち。それが無理なく話の流れに溶け込んでいくから、私たちの身近で起きる小さな事件にも裏には誰かの意思が働いてるのかもしれないと、ちょっと背中が寒くなる。


紙の上で語られるどこか遠くの事件が自分の現実の世界でも起こり得ると思えるのはまた凄いなと。


確かにみんなが凄いと言うのを実感できる小説だ。


是非とも、書店で買うか、または、本を読む人々を、暖かく迎えてくれる図書館で借りて読んでみて下さい(汗)。