今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

春、戻る


久しぶりに瀬尾まいこ節に爽やかな感動を覚えました。やっぱり、良い。


「春、戻る」瀬尾まいこ著(集英社)


以下、感想。。。



















心が晴れない、ちょっと疲れを感じてしまう時、優しく癒やしてくれる世界が瀬尾まいこワールド。


普通の、特に目立つようなところも無い、ちょっと適齢期を過ぎた女性、さくらさんが主人公。


そろそろ良い年だし、特に問題も無いし、相手の年齢もちょうど良く、しかも特に問題が無い、むしろ、歓迎してくれる両親のいる環境で、敢えて拒む点も見当たらないという好条件がまずあった男性との間で結婚が決まった。


燃え上がるような恋の結末としての結婚ではないけれど、相手の男性も誠実で、家業の和菓子屋の跡継ぎとしてしっかりと働いてる穏やかな人だ。ある意味、何も問題なく、結婚まで決まったことが問題のような(汗)


結婚が決まり、仕事を辞め、婚約者のいる和菓子屋の手伝いを週に2回。そんな時間を持て余し気味のところに突然現れた「お兄さん」


小学生の時に亡くなった父親に外に子どもがいたのかと疑ってはみたものの、30過ぎのさくらさんのお兄さんはどう見ても20代半ば。そのあり得ない登場をしたお兄さんは、身勝手な自分の都合で、さくらさんの日常にどんどん入り込んでくる。


どう見ても年下のお兄さんを怪しんで良いはずの婚約者の団子屋、山田さんは、お兄さんのペースに巻き込まれながらもどこかのどかに全てを受け容れていく。


山田さんとさくらさん、人を介しての紹介で知り合い、互いの生活ペースを守る大人の配慮を第一に時を重ねる2人。互いに、こんなものなのか、これで良いのかと思ってるのかもしれないけど、読んでるこちらには、2人がとてもお似合いだと分かる。多分、自分たちが1番気づいてないよなと。。。


山田さんとさくらさんの生活にすっかりお兄さんが馴染んだ頃、さくらさんは思い出す。理想と現実の狭間で、どうにもならなくなった10年も昔のことを。


泣けたなぁ。さくらさんのまわりは良い人ばかり。さくらさんが真面目で一生懸命な人だから。


謎のお兄さんが全然謎では無かったラスト。心が温かくなった。