今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。


1度、単行本を図書館で借りたのだけど、山野井泰史さん・妙子さんご夫妻の登山の話の導入部で返却日が来てしまって、仕方なく。。。


それっきりになってたんだけど、文庫を見かけて、ついにゲット!!


つい先日、栗城史多君のシシャパンマ挑戦が記憶に新しいけど、山野井夫妻が挑戦したのも同じヒマラヤのギャチュンカン!!


では、感想を!!


「凍」沢木耕太郎(新潮文庫)






















空路で入り、ギャチュンカンは大きく大きく迂回して、エベレストの手前のチョー・オユー寄りの山!!


8000mを超える山並の中、ギャチュンカンは微妙な高さ7952m…


アタックした隊も少なく、情報もわずかなこの山の北壁の美しさ…っていうか、クライマー独特の挑戦の意欲をそそられる「壁」に魅せられて、夫妻は山への準備を始める…


本作は半分は夫妻の来し方と挑戦への準備にページが費やされる…


いよいよ現地に入っても、高度順化の山行が描かれ、華々しい登頂を称えるためだけの作品ではないということが分かってくる。


クライマーとして、山に接した最初から、ソロ登攀を主とするアルパイン・スタイルを貫いてきた山野井泰史さんにとって、妻の妙子さんはクライミングにおける最大の理解者であり、絶対の信頼をおける人物である。


家族を持つことは、この山行で死んだら終わり…という生き方を捨てることだと思っていた山野井さんが、逆に妙子さんという伴侶を得たことで、より山への挑戦を前向きなものにしていく…


こんな凄い夫婦がいるんだなぁ(^^;)))


山行でのアクシデントに際しても、互いに尊重しあいながらも、お互いの生死については冷静に考えられる…


お互いにどんな苦境の中でも、自身で出来ることは、這ったって、なんだって、やり遂げようとする。


「凄い」という言葉しか出てこない自分が情けないけど、ホントに凄い夫婦なんだ!!


この2人の様子を克明に描いている沢木耕太郎さんの筆致が、淡々としてて、それがなおさら胸に迫る。


きっと、沢木さんから取材として、様々なことを聞かれた時も山野井夫妻は淡々とそれぞれの状況とその時の思いを語ったのだろう。


ノンフィクションには作者の人となりが色として、出るのだろうけど、沢木さんの文章は山野井夫妻が見えてくるようだ…


途中、頂上を目の前にして、体調不良のために引き返した妙子さんが待つなか、山野井さんは頂上に立つ!!


しかし、下山途中、いや下山はほぼ全てを悪天候と雪崩に襲われ、死を意識しながらのクライムダウンとなる。


この夫妻の凄いとこはここから!!


本作1/3近いページがそこにあてられてることを考えても、このギャチュンカンの下山がいかに困難であったかが分かる。


山の晴天はいつまでもつか分からない…だから、晴天続きはクライマーを不安にさせる。


だからと言って、準備を急いては、第一歩から道を誤る…


慎重な上に慎重に準備し、大胆に攻める…


そして、アタックした山で見事登頂したにもかかわらず、登頂の疲れも癒えない体でより困難な下山に挑戦することになる。


なんと言ってよいのか、安易な登山はいけないけど、山野井さんご夫妻のような「天才」のクライミングはこうして、冷静な第三者によって記録されるべきだ。


少人数によるアルパイン・スタイルならなおさらだ…


困難な下山のなかで、体に大変なダメージを受けた夫妻だが、これからの一生を夫妻の世話にあてようと思っていた山野井さんのお母様の元から奥多摩の自宅に戻り、また2人の静かな生活に戻る。


そして、中高年の方々に人気のハイキングコースのような身近な山を手始めに少しずつ高みを目指すようになる…


いったいどんな人達なんだ!!


そして、つい最近、山野井さんのお元気なニュースに触れる…奥多摩の山に熊が出た…と、山野井さんが遭遇し、通報したそうだ。


実は、その熊のニュースで、山野井さんの名前を聞き、「凍」をちゃんと読もうと思ったんだ(^^;)))


書店で文庫を見つけ、嬉しかった!!まさか、後半がこんな厳しい下山行の記録とは思ってなかったけど…


ノンフィクションって、あんまり好きじゃないんだけど、これはお勧め(^-^)v