朝日新聞による「吉田調書」の問題(捏造なのか誤報なのか、詳しくは知らないが…)以降、なんだかどれが本当なのか分からなくなった福島第一原発事故に関する報道。
そんな中で、その問題にもきちんと触れた上で出版されているのを確かめた上で読んでみた。
原発の事故であるから、当然ながら専門用語も多く、難しい。
ただ、誰にでも分かるように放送されるテレビ用の取材の資料を元に執筆されたルポルタージュであるからなのか、図解や写真が多く用いられ、私達の理解の手助けになる。
それでも、まだ十分難しいけど…
「福島第一原発事故 7つの謎」NHKスペシャル『メルトダウン』取材班 著(講談社現代新書)
以下、感想…
未曾有の大災害、東日本大震災。震災被害だけでも類を見ない甚大なものであったが、その直後に襲ってきた津波によって、その被害はさらに拡大し、世界においても過去に経験したことのない事態が福島第一原発で発生した。
あの時の体の震えが今でも舞い戻ってくることがある。比べ物にならないほどの小さな「揺れ」でさえも…
あの時、マスコミや人々の注目を浴び、罵倒を受けた東京電力。
そして、どう見てもスタンドプレーにしか見えなかった菅直人を中心とする首相官邸並びに内閣の動き。
これらに対する印象は残っているが、それらとは別に放射線量の高い、まさに現場で奮闘した人々については、吉田所長の名前で一括され、その苦境や現実はあまり知らされなかった。
命をかけた作業の連続の中で、わざわざ説明している暇も余裕も無かったろう。
それらの証言を集めた記録として読んだ。
国を左右する大災害への対策は、そりゃあ当然、首相がリーダーシップをとって対応すべきだ。
しかし、1人の政治家に多くの知識と職人技が必要な対応など出来るはずが無い。
まずは、プロフェッショナルに対処を任せ、しっかりとその進捗を見極めていく冷静さと強い推進力を持つ人でなければならない。
その現場を任せる人々と積極的に緊密に連携を取る姿勢を貫く人。全体を見渡せる広い視野を持つ人。大上段に物を言う人間では絶対にダメだ。
この本を読むと、リーダーとしての資質に欠ける人間が、その地位に就いた時に国が危機的状況に追い込まれる災害に見舞われたら、どれほどの混乱を生むかが分かる。そして、冷静さを欠いた挙句、いかに幼稚な行動に出るかがはっきりと示されている。
どれほどのリーダーがいるのかは分からないが、少なくともあの時の日本のリーダーは絶対にあの立場に立ってはいけない人間だったのだとわかる。
彼には何のお咎めも無しなのか…
こんな話は本書の主旨とは違うからここまで(不愉快極まりないし…)
本書は、災害時のリーダー論ではない。あの時、福島第一原発の最前線でいったい何が起きていたのか、その検証なのだ。
本書の中でも、多くの人が語っている。今後に活かすべきと。
こんなことは二度とあってはならない。でも、あってはならないからこそ、十二分に話し合って、検討し、最善の対処をし、全てに万全を尽くす必要があるのだとわかる。
どうか、皆が冷静にこれからのために検討、研究をしていかれるように。
そう願わずにはいられない。