最近、シネスイッチ銀座に続けて行ってる私。そこでじっくりと観せてくれる予告編の中に、河瀬直美監督の「あん」が…
監督が河瀬直美さんってだけでも話題になるだろうに、樹木希林×長瀬正敏の共演、しかも希林さんのお孫ちゃんがデビューするとか…
名前だけで注目すべきと思うし、それを映画のチョイスが素晴らしいといつも感じるシネスイッチ銀座で上映とあれば、苦手な邦画だけど、ちょっと気になったりする(汗)
で、調べてみたら、原作があるとか…
これまた、びっくりฅ(๑*д*๑)ฅ!!ドリアン助川さんの小説‼
えっΣ(゚д゚;)
ドリアン助川氏と言えば、「叫ぶ詩人の会(*ノ´O`*)ノ」だっけ?相変わらず髪は黄色いんだろうか…(汗)
そんな印象しか思い浮かばない( ̄◇ ̄;)
そんないろんなことに囚われがちな私が、偏見の恐ろしさや人々の無知と無理解について触れたお話を読んでみました。
以下、感想……
もう、泣かされました。
登場人物はほんとに少なくて、でも、それでも、その他大勢の無言の意思みたいなのは感じられるお話で…
私には現実感を伴わない話がベースになっているので、本当のところ、どれほど苦しみながら生き抜いてこられたのか…
例えば、生まれ育った地域に療養所があれば、少なからず意識の中にはあったのだろうが…
タイトルの「あん」は、この小説の真ん中に。
シャッター通りになってしまった商店街で細々と営業を続けるどら焼き屋「どら春」
店長は、数年前に塀の中での生活を強いられた青年。その時の借金を肩代わりしてくれた店のオーナーに恩義があり、亡くなった後も借金を奥さんに返済しながら、店を続けている。
満開の桜が風に花びらを揺らす季節。店に風変わりなお客がやってくる。
手が不自由で顔が少し引きっつているおばあちゃん。話し相手欲しさに貼ったアルバイト募集の貼り紙を見て、雇ってくれと言ってくる。
面倒はゴメンだとばかりに時給が安いからと断ると、おばあちゃんは時給は200円でも良いと…ただ、働きたいだけなんだと。
その後、おばあちゃんの作る「あん」が素晴らしいことが分かり、店長も初めて本気で仕事と向き合うようになってくる。
おばあちゃんの作るあんのおかげて、一時は行列も出来るほどだった店だか、おばあちゃんの過去の病気が噂になり、店には閑古鳥が鳴くように。
おばあちゃんの過去の病気はなんだったのか。その名は「ハンセン病」
感染力が低く、治療に当たった医療関係者で感染した人はいないという。薬の服用で大事には至らず、かつて療養所に隔離されていた人々も全てが治癒している病気なのだ。特効薬の輸入が遅れた日本では、長く人々の無理解と偏見によって患者たちは傷つけられていった。
生まれ故郷を追われ、生活を根こそぎ奪われ、療養所に隔離された患者たちは病気の痛みと恐怖に襲われ、さらには強い副作用が彼らの体を歪めていった。
そうした歴史を生きてきたおばあちゃんは、「らい予防法」の廃止と共に得た「自由」を生きるのだが、すでに人生をやり直すには長い年月が過ぎ去っていた。
親兄弟は既に亡くなっていたり、かろうじて生きていても世間の目を恐れて会おうともしない。
ちゃんと病気の問題は解決されているのに、世間の人々の心に巣食った偏見は消えることがない。
その厳しい現実の中でも、おばあちゃんの誠実な生き方に心を開く人が現れる。それが、どら焼き屋の店長であり、常連客の女子中学生だった。
この2人にとって、おばあちゃんとの出会いはかけがえのないものとなっていく。
現実はこんなものじゃないだろう。きっと、全てにおいて言葉に出来ないほどの苦痛を伴う毎日だったろう。そんな中で、絶望感に打ちのめされながらも「死病」ではないから、生きていかねばならない。
こんなふうに生きてきた人がいるということ。それを忘れてはいけないということ。
いい年をして、ハンセン病についてはあまり知らない。療養所に暮らす人々が法律の廃止で自由を得ながらも、そこ以外に生活の場が無いという事実をニュースで知った時のなんとも言えないやるせなさのような感覚がまた蘇ってきた。
ことさらに法制度の改革を訴えてるわけでもないし、厳しい現実を糾弾するのでもないこの小説。
ここから、読み取るのは、知ることの意味。歩み寄ることの意味。
ドリアン助川さんって、ある意味叫んでる。
これが映画になる。どんなふうに映像になるのか楽しみだ。