今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

勝ち上がりの条件 軍師・参謀の作法


磯田道史さんの著作、第2弾はこちら。。。


「勝ち上がりの条件 軍師・参謀の作法」半藤一利磯田道史(ポプラ新書)


以下、感想。。。




















半藤一利さんと磯田道史さん。このお2人の対談となれば、読んでみたい。


半藤一利さんはつい先だってお亡くなりになった。昭和史を紐解くうえで、なくてはならぬ存在が半藤さんだ。まさに「昭和史」というタイトルだったと思うけど、分厚い上下巻の文庫本を飾り物にしていた私。確か授業の参考にするために綾瀬の国鉄総裁死亡事件の詳細を知りたくて、わざわざ買ったのだけど、当時はブックオフもなかったし、でも結局必要なところだけ読んでそのままにしてしまった。


半藤さんのような著作家をドキュメンタリー作家というのだろうか。膨大な取材に裏打ちされた著作は、読む側も心して立ち向かわないと読みきれるものではない。


そこへいくと磯田先生は毎週テレビで見ているせいか、確かに物知り博士だなぁといつも感心しきりだが、身近な頭の良い熱いおじさんであり、半藤さんとの対談ってちょっと意外な感じを受けた。


ところが、読み始めると半藤さんこそ近所にいる歴史好きで、私たちと同じ目線で語れる人のような印象を受けた。年少の磯田さんにしっかりと教えを請い、その考えを聞き、合わせてご自分の考えや思いを伝えてくれる。大御所然とした雰囲気など微塵も感じさせない。


磯田先生も確かに凄い。半藤さんを向こうに回して、細かな歴史のエピソードを披露してくれて、なんとも贅沢な対談本だ。


「参謀」について、本書を読むことで本当の意味を知ることができる。「参謀」って、私などは作戦司令官のような本来別の立場にある職務を全て一緒くたにした「英雄」のように考えていた。大河ドラマ黒田官兵衛を主人公に「軍師」を描いたから、それの影響も大きいのかもしれないが。軍師=参謀で、何より司令官や殿様を守り、それが国や家を守ることに繋がる…仕事だと捉えていた。どうも違うかも…と。諸葛孔明みたいな…


机上での学習は頭の中でのことだ。絵空事と言っても良い。どれほど準備しようと絵空事絵空事。現実はその上を行く。予想し得ない現実の中で経験を積み、目の前の事とそこに控える背景とを冷静に判断し、全体を俯瞰しながら、今後の対応への道筋を立てる。その経験が体も心も鍛え上げていく。


私は本書を読み、参謀とは司令官が判断を下す際の諮問機関ではなく、現実を踏まえた現場指揮官だと理解した。


旗印としての司令官や殿様は現場の最前線に立つわけにはいかない。多くが生き残ったとしても旗印が失くなれば、それは烏合の衆となる。その旗印を守り抜くために将来をも見据え、いかに戦略を練り、実行に移すかが参謀の仕事と思ったがいかがだろう。


最後に一読者として好き勝手を言わせてもらうと、幕末日本の行く末を案じた勝海舟の行動をお2人はいたく褒めていらっしゃるのが残念でならない。私は小栗上野介派なので、やっぱり勝海舟は好きになれない。