今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ディーン、君がいた瞬間


年末のシネスイッチ銀座。美しいイルミネーションと買い物客でごった返す銀座の街。館内はそれほどの混雑も無く、落ち着いて鑑賞できた。


エデンの東」や「理由なき反抗」など、ジェームス・ディーンの主演作のタイトルは知ってるけど、今で言うアイドル俳優なのかと思ってたから、実際に見たことはなかった。


でも、必ず名作の1つとして名のあがる作品に出演した若くして逝った天才の姿を見ておきたいと思って、劇場へ。


ディーンと共に物語に登場するのは同い年のカメラマン。若くして家庭を持ち、ディーンとはまるで違う人生を送ってきた青年。彼はカメラマン集団のマグナムに所属しながらも、自分の納得いく仕事を求めて悩みもがいていた。


そんな彼が被写体として選んだのは、当時駆け出しの俳優ながら、いきなり主演に抜擢され、注目され始めたばかりのジェームス・ディーン。


ディーンが映画界を駆け上がるのと一緒に彼もカメラマンとして飛躍したいと考えていた。


しかし、その被写体たる俳優は皆が天才と呼ぶ異才の人で、一筋縄ではいかない人物だった。


時に衝突し、時に歩み寄り、彼らは旅に出る。


公開前の作品のプレミア上映と新作のクランクインの間のわずか2週間ほどの間に、彼らはディーンが生まれ育った街へ向かう。


ディーンを暖かく迎える叔父一家。両親を亡くした彼を家族として育ててくれた人々だ。そこで、ディーンは年相応の普通の青年の表情をのぞかせる。


自然体のディーンにカメラを向けながら、あっという間に過ぎ去る大切な休暇。


仕事に戻り、カメラマンが撮ったディーンの姿はLIFE誌に4ページも掲載される。


仕事に行き詰まり、家族との関係に悩んでいたカメラマンの状況は一気に開いていく。


ほんの僅かな安息の日々を共にしたディーンは、再び華やかなスポットライトの中へ戻っていく。


僅かな接点でしかなかった2人の関係。


カメラマンに新しい仕事が決まった朝、彼の家の前にタクシーが止まる。中からディーンが旅に出ようと誘うのだが、新しい仕事に向けて動き出さなければならない彼はその誘いを断ってしまう。


その日は、「エデンの東」の公開日だった。


そんな大切な日に大きな舞台を抜け出してまで会いに来た友人を見送ったカメラマン。


その後のディーンの運命を感じさせるかのような別れ。


独自のメソッドでハリウッド映画界に飛び込んだ天才。彼の横顔を写真で披露したカメラマン。


俳優の仕事もカメラマンの仕事も映画にはほとんど登場しない。彼らの表面を映し出すのではなく、2人が出会い、短い旅の中で共にした時間だけを描く。


あっという間に過ぎていく輝く日々を淡々と語る映画だ。視点が限られている分、彼らの「仕事」を求めて劇場に来た人にはいささか物足りなさが残るかもしれない。


あの朝、ディーンと共にカメラマンがタクシーに乗り込んでいたら、違った未来があったのだろうか。


あの朝、ディーンが公開日のイベントに予定通り参加していたら、違った未来があったのだろうか。


そんなふうに感じる映画だった。短い一生を駆け抜けていった天才の、人が知らない本来の表情が輝いてる映画だった。


ただ、天才が主人公のわりにいささか地味な映画だな。


その天才ぶりを確かめてみたくなる映画ではある。


ディーン役のデイン・デハーンの喋り方がもごもごとハッキリしない。彼本来の喋り方ではないと思うので、ディーンはこうやって喋る人だったんだなと思った。


朴訥と言えばそうだし、無愛想と言えばそうでもある。そんな喋り方。それがディーンだったんだろうなぁ