今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ROMA/ローマ


アルフォンソ・キュアロン監督最新作。Netflix配信映画で、様々な映画祭で評価され、アカデミー賞にもノミネートされるに至り、日本でも劇場公開された。


Netflixでの配信公開というパターンは今後さらに増えると思われるが、果たして、ネット配信作品を「映画」と言えるのか!という議論を棚上げにしたままのアカデミー賞監督賞の受賞となった。


一昨年だったか、その前だったか、クリス・パインが出演した西部劇がNetflixでの公開映画として「作品賞」にノミネートされたことがあったのだが、内容的には良く出来ていたと聞いたけど、Netflixに権利がある以上、劇場公開はされず、タイトルもうっかりしたので、DVD・Blu-ray化されてるのか調べることもできず、そのままになっている。その時も、果たして映画なのかとの問いがあったが、受賞するほどのインパクトは無かったので、そのままに。。。


そして、今回は明らかに「作品賞」の中でも有力な候補になったので、再び議論が再燃した。


ただ、今回は「グリーン・ブック」というどの世代が観ても、どんな人が観ても、文句のつけようのない圧倒的な作品があったので、受賞には至らなかったが、今後映画賞、映画祭においてネット公開作品の扱いがより注目されることになりそうだ。


私は個人的には、やっぱり映画は映画館で観てこそのものと思っているが…だから、Netflix民ではない私にも鑑賞の機会が訪れたので、映画館へ足を運んだ。


映画の内容を云々する前にまず観終わった直後の率直な感想として、作品賞は無いな…ということ。それは「グリーン・ブック」という対抗馬がいたからと言うことばかりでなく、この映画が誰にでも受け入れられる映画ではないと思ったから。


それは上手く言えないけれど、誰もが称賛し、感動を得るとか、衝撃を受けるとか、そう言った普遍性のあるものでは無かったから。


舞台はメキシコのある裕福な家庭。映画の案内を見ると「メキシコの中流家庭」とあるが、あれで中流とすれば、メキシコという国はよほど豊かな国なのではないかと思った。


そこには夫婦と子供4人、妻の母親、メイドが2人、暮らしている。メイドたちは確かに大家族の世話と家の切り盛りと大忙しだが、しっかりとした部屋をあてがわれ、子供たちも懐き、家族の一員のように暮らしている。


メイドのクレオが主人公。本作はキュアロン監督の子供時代、自分の家にいたメイドとの暮らしを描いたものらしい。


クレオが雇い主に信頼されて暮らす生活の中でおこる様々なことを描き出している。雇い主夫婦の不仲や彼女自身の妊娠など、ただ日常を描くといっても、雇い主には雇い主の、彼女には彼女の人生の大問題が起きるのだ。


全編モノクロ映像。これがまた良い。今から50年以上前の暮らしを映し出す時、モノクロにすることで今と違う情報量の少ない生活ぶりを感じ取れる。そして、モノクロによる陰影が彼らの生活に差す陰を暗示してるような場面もある。


さらにラスト近くで、主人公がずっと引きずってきた本音をポロリと吐き出す場面など色付きだったら、彼女のそのたった一言を聞き漏らしそうだ。


大きく畝る波の様子はモノクロだからこその美しさと恐ろしさを感じとることができた。光と陰がよりはっきりと感じ取れる。そうした表現上の工夫や技術的な部分においては受賞は当然だと思った。


そうした表現上のインパクトに目が行き、ストーリーは少し大雑把に掴んでいたためか、諸々見落しがあった。。。


そうか、病院であったアントニオは、あのアントニオなのか…と帰宅してから映画評に目を通して気づいたり。


様々映像表現に感動する場面が多く、ストーリーがただの日常描写に受け取られてしまいそう。まさに私がそうだった(汗)。だから、少し長く感じたのは仕方ないのかもしれない。