今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

TENET テネット


クリストファー・ノーラン監督の新作です。日本でも圧倒的なスタート・ダッシュをきったようで、コロナ禍で停滞していたエンタメ界に本物が戻ってきた感じかな。


コロナ禍で世界のエンタメの中心であるアメリカでは映画や演劇が全面的にオープンにはなっていない状況にあり、新作はかなりの渋滞中と思われる。そんななか、割とスムースに公開になったのではないだろうか。


コロナの心配があるので、劇場や映画館に足を運ぶのは今のところ、比較的若い世代中心なのだと思う。制作本国の意向が影響する洋画に比べて邦画の公開はコンスタントに再開されたが、こうした背景からか、その内容を見ると若者をターゲットにした作品が多い。コロナの影響は計り知れない。高齢層が好む時代劇の代表で公開を楽しみにしていた「燃えよ剣」は今のところ、そのアナウンスすらされていない。私のような年代には様々公開はされているけれど、観たい映画が無いというのが現状だ。


さらに、国の経済対策により、劇場やスポーツ観戦の定員上限が一部緩和された。映画館は劇場に分類され、「静かに」鑑賞するものなので、定員いっぱい(全席販売)が可能になった。


それでは、皆さん!未だコロナ禍の真っ只中にあり、けしてコロナ感染症を制圧出来ていない現状で、いくら換気設備が優れているとはいえ、映画館の真っ暗な密室に、その背景が分からない全くの見ず知らずの人物と肩が触れるほどの距離で2時間〜3時間座り続けることができるだろうか。


私はイヤだ。そうなれば、当然映画館が遠くなる。ところが、そう言う客がいることを念頭においたのかどうか、全席販売が解禁になっても一部のシネコンでは前後左右1席空けての販売を続けることを選択した。これがいつまでかは分からない。でも、この措置が続くかぎり、私の第一選択は1席空けの映画館になる。


「テネット」は注目作品だったこともあり、希望の劇場で上映された。この際、スクリーンが大きいとか小さいとかは関係ない。


全席販売に踏み切った映画館も、当然ながら、環境を選ぶ観客がいることも視野に入れてるだろう。映画や演劇などの業界の指針に従って、館内での飲食に制限を付けた。飲み物のみ可。ポップコーンをつまみながら映画を観ることが出来ないのだ。私にはどうでも良いことだが、食べながら観たいと思ってた人にはちょっとね…(汗)。


飲食も結構な儲けがあったらしい。人を全席入れると飲食での儲けが上がらない。でも、人を入れないと企業としての映画での儲けが上がらない。業界にとっては悩ましい選択だ。あとは観客に委ねるしかない。


が、しかし、全席販売に踏み切ったところで、毎回満席になる映画など一握りだ。その一握りのために他の儲けに目を瞑らなくてはならない。全席販売したけれど、今日は数人しか来場されてないので、食べ物を販売します!ってワケにはいかない。どちらが得なのか……安全安心を前面に出し、1席空け販売を継続した方が企業イメージも良くなりそうに思うのは私だけだろうか。。。そんな選択を出来る映画館はそれこそ一握りなのかもしれない。それほど今は切羽詰まった現状なのかもしれない……


さて、さて、前置きが長い、長い(汗)。


まず、超面白かった!それがまず第一だ。なんだか難しい時間の理論なんて、一切関係ない。そんなのは映画公開前に、少しでも、離れてた客を呼び戻そうと必死に訴えたプロパガンダに過ぎないと…確かに、難しい用語が出てくるが、そんなのは観ているうちに感覚で理解できる。分からない言葉に引っかかっているとあっという間に置いていかれる。


クリストファー・ノーラン監督の時間に関する持論に身を委ね、起こることを見つめていれば、それで良い。いくつもの順行と逆行を繰り返す中で、それが、映画得意の「ネタ振り&回収」のセットだと分かってくる。


あぁ、あそこがここに繋がるのか…と。でもそれはけしてタイムスリップでもなんでもない。


順行と逆行が交差する場所なのだ。


第三次世界大戦を阻止するために訓練された特殊部隊隊員は順行の推進者。それに絡んでくる人々は逆行してきた人々。未来を知る彼らは逆行するなかで、自分たちの司令塔に出会う。逆行者は、順行者が正しく未来の場所に向かうよう様々な手助けをする。


クリストファー・ノーラン監督の頭の中はどうなってるんだろう。以前「インターステラー」を観た時、時間の流れのスピードの違いの中で行き違う父娘の姿を同じスクリーンに映し出し、今の時間しか見えない娘には感覚に訴えることで父親の存在を示した場面にいたく感動したけれど。


今回はさらにその上を行く感じだ。


主人公と行動をともにする逆行の特殊部隊隊員がラストでずっと前に自分たちは会っていると言う。その辺りも観てみたものだが、それはまた別の話になってしまうか…