私的に快作1番推しの「永遠の0」の作家、百田尚樹さんによる作品…
以下、感想…
凄い!!
凄い!!凄い!!
マリアはオオスズメバチのワーカーだ!!
「みつばちハッチ」や「みつばちマーヤ」を見て育った私世代(40代)の人間には、蜂を擬人化して小説の主人公にするなら、絶対にそのポジションは蜜蜂以外にはあり得ない!!
ところが、百田さんが主人公に選んだのは、地中に巣を作り、その狂暴さで、人間をも恐れさせるオオスズメバチ!!
たまにテレビで蜂の駆除をしてるのを見て、その姿を見るくらいの接点しかないオオスズメバチ!!
百田さんの選択はどこまでも斬新だ。オオスズメバチを主人公にするのはまぁ良しとして、その中でも、オオスズメバチの巣をベースとした社会の中心人物、もとい、中心蜂である「母」なる女王蜂が物語の「核」になると思うのが普通ではないか…
ところが、この物語は「巣」の中に何十、何百といる働き蜂(ワーカー)の目線で語られる。
主人公の「マリア」は仲間達から「疾風のマリア」と呼ばれるほどの速さを誇り、成虫になって間もない頃から、大きな期待を背負っている。
「マリア」は巣の中で、年長の姉達から、オオスズメバチの社会の成り立ちを学び、狩りに出た先の森や草原では、オオスズメバチとは違う種のもの達からより広い社会の実像を学ぶ。
「マリア」の学びは私達読者の学びに通じる。
遺伝情報の伝達の確率を説明するために百田さんは図解する。
言っておくが、本書はノンフィクションでもないし、図鑑的要素の比重の高い作品でもない。
れっきとした小説だ!!
ただ、主人公がオオスズメバチで…
ただ、主人公が女性でありながらも、守ってもらうのではなく、守るべきもののために闘う勇敢さを持っているだけで…
百田さんはこの作品を書き上げるにあたり、相当の文献資料に当たられたのであろう。
実際に、後書きで、貴重なアドバイスを与えてくださった先生方のお名前を紹介されている。
小説という形をとりながら、オオスズメバチの生態の真実を語っている。
こんな視点にたって、動植物の生態を語るのは、斬新と言わずして、なんだ?と。
「永遠の0」の時も思ったけど、着眼点がちょっと違う!!
発想の転換というか…
読み手は、真新しいメガネをかけて、見たこともない新しい社会を知る…
栄華を極めた帝国の凋落する様は、人間社会でも度々目撃される。
たった30日程度の「マリア」の寿命をこれほど暖かく愛情溢れる表現で語る百田さんに聞いてみたい…
オオスズメバチのワーカーを主人公とした、その理由を。
とにかく、絶対お勧めできる。
きっちりと生態に沿って、彼らの日常に迫り、最期の瞬間まで描ききる。
動物記や昆虫記の類いを好んで読む方には当然ながら、そうでない方、また苦手意識を払拭出来ない方も十分に楽しめるし、マリア達の闘いにいつしか入れ込んでいる自分に気づくと思うよ!!