今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

少女は自転車に乗って


今年最後の岩波ホール!!


「おじいさんと草原の小学校」を観て以来、定期的にお世話になってる岩波ホール


今年、岩波ホールでメイン・プログラムとして上映された映画はいずれも評判が良く、私も何本か観ているけど、お客さんの入りも良かった。


特に前プログラムの「ハンナ・アーレント」は凄かったな!!


私の感触と世間の評判が思いっきりズレてる映画ではあったけど(;^_^A


さぁ、前置きはともかく、感想を!!


年末を締めくくるのにぴったりな前向きな希望を感じ取れる映画だった。


でも、これは、女性の立場が認められている日本で安穏としてスクリーンに映し出されるサウジアラビアの女性達の姿を観てるから感じられることで、その人のバックボーンとなる視点でずいぶん印象変わるだろうなぁ…


サウジアラビアは今でも、「映画」は禁止の対象になる物で、そんな中で、サウジアラビアを舞台にサウジアラビアで撮影を敢行したのは、なんとサウジ初の女性監督!!


お名前を失念してしまった。後でちゃんと調べて、記憶に留めておこう。


最初だから、立派だとかそういうことじゃなくて、現在の女性達の抑圧された立場を明確にするテーマを映画の主題に据えた勇気、それに立ち向かう次の世代への希望を少女を主人公に据えることで表現した勇気。


そして、なにより、他者に委ねず、自ら様々な困難を乗り越え、メガホンを取った勇気…


そして、こんな娘を育てた親を含む、彼女を取り巻く人々、さらに撮影現場で彼女と仕事を共にした男性達の勇気に頭を垂れる思い。


本編は、女性はかくあるべきとする教育の現場から始まる。


いつの時代にも、大人の事情を素直に飲み込めない子供はいる。主人公「ワジダ」もそんな1人。


この映画の原題は、そのものズバリ「ワジダ」!!


つまり、彼女の記録なのだ。


自分たち女性が従うべきとされる暗黙の生活ルール…


ワジダには理解できない。なぜ、そうなのかという説明が無いからだ。


彼女は、自分がやりたいこと、自分が楽しいことが日々の生活の選択基準だ。でも、大人達はそれを許さない。


彼女のこうした発想の根幹は、やはり母親だ。


女性が軽視される世の中にあって、愛される1人の女性でいたいという素直な思いを持ち続けている人なのだ。


でも、女性の中にも昔からの慣習を良きものとして考える人達も多い…自分たちの立場がとても窮屈なのに、それをそれと感じない人の方が多いのだ。


旧習と暗黙の社会ルール、そして、かの国の国家の根幹をなす思想…


のんきに語ることが出来ない重いテーマなんだよね…


そんな「許されない」日常が普通のワジダは、男の子が自転車に乗っている姿を目にする。


その颯爽として走る姿は、ワジダにどんなに強い希望を与えたことか…


男女の同席が認められないこの国にあって、彼女は人の目に触れない
自分の場所で、少年から自転車を借りて、レクチャーを受ける。


それこそ、先取的な行動だ。


ワジダは自転車販売店で、必ず買うからとっておいてほしいとお気に入りの自転車の取り置きを頼む。


店主にとったら、この上ない驚きだったはず。子供が、しかも少女が1人で交渉にやって来たのだ。


けれど、店主はこの無謀な申し出をしたおてんば娘の願いをかなえるのだ。


男性だって、女性の前向きな行動を認めているのだ…そう感じられる場面だ(店主の行動が明かされるのは、ラストになるが…)


自転車を手に入れるため、ワジダは学校での勉強に力を入れ、コンテストに出場する。


これは私にはよく分からないけど、コーランかなんかの一節を暗唱するコンテストなのかな…


正直言うと、かなり期待して行ったんだけど、前半部分はサウジの難しい状況を説明するような行ばかりで、多少寝落ちしてた部分があって…(^-^;)


今一つ分からないコンテストの意味…(笑)


でも、ワジダはその努力の甲斐あって、優勝を勝ち取り、賞金を得る。


その金額が、ほぼ自転車の代金だ。


優勝インタビューでワジダは少女らしい正直さで、賞金を自転車購入に使いたいと答える。


話を聞く女生徒達は一様に笑顔でワジダの挑戦に目を見張る。


ところが、インタビューした校長は、ワジダの意思など関係なく、その答えを一切無視し、「寄付」が最良で全てだと言い切り、ワジダの言として、「寄付する」ことを宣言する。


話を聞いていた女生徒達の表情も凍り付く。


ワジダの落胆ぶりは観ている私の胸を締め付ける(T^T)


旧習との戦いだ、ワジダ!!


希望が砕け散って、とぼとぼと帰宅した家では更なる旧習との戦いが待っていた。


あれほど、夫との暮らし、家族との暮らしを望んでいた母が旧習の前に跪く選択をしていた。


母の思いを理解するワジダは、きれいに着飾って共に乗り込んでやろうとかなり過激な発言をするけれど、母は首を振り、そんなお金は無いと言う。


母は、自分の思いを娘に託したのだ。彼女たちが成長して世の中に出て行く時代のために…


母がお金を使ってしまったと指し示したのは、ワジダが自転車販売店の店主に取り置いてもらっていた自転車だ(*^^)v


ラスト…


自転車に乗って町を走るワジダの横顔がカッコいい(´V`)♪大人の私が観ても、ホントに爽やかで希望に溢れ、ワジダのどこまでも前向きなその笑顔がホントにカッコいい!!


ただ、真っ直ぐ進んで行った先に大通りが!!


ワジダの進行を止める大通りの流れは、彼女のこれからを暗示しているようだ。


慎重に次々とやってくる車を見届けているワジダ。


彼女の目の前を車は何の気遣いもなく、横切っていく。


けれど、いつか必ず、あなたに気づいて止まってくれる車もあるはず!!


だから、頑張れ、ワジダ!(^^)!