今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

悪魔は誰だ


ヒューマントラストシネマ渋谷にて上映中の「容赦なき韓国映画」の1本。


地味な作品だけど、評判も良いので、頑張って観てきた(ง •̀_•́)ง


うん、良かった‼


あぁ〜、言いたい。お話のカラクリを言いたい。でも、言っちゃったら、この映画の大きなポイントを逃してしまう٩( •̀ω•́ )ﻭ


実は時系列がバラバラなのだ。


最初は気づかなかった。


完全に映画の世界に引き込まれて、そのまま鵜呑みにして観てた。この映画は時々回想シーンが登場する。でも、これは「回想です‼」って思いっきり分かるように差し込まれるもので、そこは区別できるんだけど…


そして、あるところで、思わぬ急展開で「あぁ〜、そうなのか‼」っと…


分かってみれば、なんてことないんだけど、まんまと編集マジックにハマってしまった(^。^;)


その手法が鮮やかだ。よく練られた脚本だと思った。


この予想外の展開で、韓国映画特有の「恨」の印象がずいぶん違ってくる。


15年前の誘拐事件に端を発した新たな誘拐事件。


誘拐された子供の年齢がミソ‼


15年前の被害者は自分の危機に関して、十分に察知し、犯人に一矢報いようと自分の荷物からペンを隠し持つ。


つまり、十分に賢い少女だったのだ。ただ、それがアダになった。賢い少女の反撃は犯人にとって、おとなしくしていれば良かったのに「バカ」なヤツ…ということになる。


それが、今回の被害者は違う。簡単に抱えあげることができ、状況もよく飲み込めていない。祖父が迎えにくると思っている。


脚本の「穴」に思える部分が実は微妙に計算されているところなのではないか…


観終わって、しばらく経ってからの方が、あのバラバラのシーンのどこが現在で、どこが過去なのか、回想なのか、自分の捉え方が間違っていたように強く感じるようになる。


不思議な映画だった。


もう1回観ないとちゃんと理解できないんじゃないか…


なにしろ、渋谷でしかやってないので、もう1回は無理だけど、DVDが出たら、ちゃんと見直さなきゃ٩( •̀ω•́ )ﻭ


15年前の犯人の言い草が非常に癇に障る。なんだあの開き直りは(ー_ー)!!


そして、そんなふうに開き直って、自分の犯罪を正当化したから、15年追い続けた元刑事は一線を越える。


十分償ったつもりでいるのは犯人だけで、被害者はその時から時が止まったままなのだ。


15年前、事件現場で娘の亡骸を抱きしめ、叫んだ母が娘の弔いのために訪れる森。大きな1本の木には娘と同じ名前がつけられている。


その木の根元にそっと置く靴は、いつになってもあの時のままの大きさだ。


犯人が犯行当時置かれていた状況は、確かに気の毒ではあるが、そのためになんの関係もない子供が命を落とした。


その落とした命と引き換えにその後の人生が約束されたと知ったら、犯人の娘はどう思うだろう。


父が手を染めた犯罪のために自分の娘が被害者になったと知ったら、犯人の娘はどう思うだろう。


親としての辛い心情は分かっても、赦すことは出来ないだろう。そして、自らも罰していくだろう。


だから、15年後の現在の誘拐事件の「真相」はけして世に出ることは無いだろう。


ある意味、怖いお話だ。


犯人は誰なのか分かっていても、真実を明かしては生きられない人がいるということ。だから、誰もが口をつぐむだろうと予想できること。


世間に語られた「真実」が「真相」となっていく。本当の「真相」はずっとひた隠しにされていく。


着眼が面白いし、時系列をバラして繋げたことで、一味違ったサスペンスになっていて、韓国お得意の「恨」映画なんだけど、妙にスッキリした後味で。


上手いなぁと唸ってしまう映画。