今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

アンナプルナ南壁 7400mの男たち


基本、ドキュメンタリーって苦手なので、あまり観ないのですが、大好きな「山」の映画なので、観に行ってきました。


夏に「山」の映画は何本か公開されましたが、タイミングが合わなくてどれも観られなかったので、これだけはね(ゝ。∂)


登山者の10人に4人は、生きて山を降りられないという急峰、アンナプルナ南壁。


8000m越えの山の中では、10番目の高さではあるが、頂上を目前にして、酸素の薄い中を7kmに渡り、尾根を横断しなければならないその厳しさに多くの登山者が途中で断念して下山するなど、登山家にとっては鬼門のような山。


周到な計画を立てながら、アンナプルナに挑んでいた登山家グループ。


その中心的な登山家の1人が、頂上アタックのベースとなるキャンプ4で、肺水腫の悪化で動けなくなってしまう。


比較的、体調の良かった1人だけが頂上にアタックし、体調に異変を示した登山家と自身も頂上アタックに不安を感じた若い登山家がテントに残る。


そして、急激に体調が悪化していく登山家を助けるために、ベースキャンプと連絡を取り合いながら、この山の近くに居残っていて、高地に体が馴染んでいた様々な国の登山家が救助のために駆けつける。


この映画は、刻々と悪化していく登山家のタイムリミットを見極めながら、やれることをやりきろうとその場に集まってきた山男たちの記録だ。


彼らは山を下りれば、それぞれの生活がある。医師や歯科医など、普通に社会に接点を持つ者もいれば、軍隊で登山の教官として山登りが仕事になっている者、山登りが人生の全てになっている者…


本当に様々な境遇にあり、国も違う彼らが、山で救助を求める者があれば、何を置いても馳せ参じる。


それでなくても、厳しい状況にある要救助者をアンナプルナまで助けに行くのだ。


生半可な覚悟では進めない。


でも、彼らの心の根っこには「山」という同じ国の友を助けたいという強い思いが…


救助に関わった登山家やその関係者たち。


ことさら、熱く語るわけではないが、面識もかろうじて数度顔を合わせただけという間柄にもかかわらず、彼らの中には強い仲間意識があり、その言葉1つ1つが聞く側の心を揺さぶる。


結局、彼らの救助は間に合わず、無念の下山をすることになるのだが、その絆の深さに観終わった後、なんとも言えない思いを抱く。


「山」には、全ての人々の様々な利害を越えて結びつける強い力があるのだとズシリと感じる。


国家間の無理解もこの映画で語られる普通の人としての思いを皆が感じとれば、氷解するのではないかとすら思ってしまう。それだけ、山に登る人々には国境が無いのだ。