久しぶりにシネスイッチ銀座のレディースデーに行ってきました。
公開直後は連日満席が続いてたと聞く本作。来週あたりには終映かという時期になってしまい、慌てて鑑賞。
相変わらず、場内は半分以上埋まってる。
評判が良いのね。
インド映画で女性が主人公と言えば、最近まで同じシネスイッチで上映されていた「マダム・イン・ニューヨーク」が記憶に新しい。
あの映画も保守的な国で女性の立場や置かれた環境に一石を投じる作品だったけど、本作も同様。
こちらは、ご主人と娘を支えながら、必死に生きてる奥さんが、自分が本当に「生きる」ことを実感するために一歩踏み出す映画。
「マダム…」は、自分にも力があることを認めてもらいたいと自分の殻を破るところまでは行ったけど、人生まで変えようという内容ではなかった。
こちらは、毎日帰りが遅く、会話の無い夫との生活に行き詰まりを感じている主婦がたまたま出逢った男性と文通しながら、自分の生きる道を選び、踏み出そうと決意する内容で、もう一歩先に進んだ感じ。
インドは面白いシステムが構築されている。
都会に務める家族にお弁当を届ける配達システム。それぞれの家から集められた弁当箱が通勤電車に乗せられ、自転車に乗る配達員にバトンタッチされながら、家族の職場に配達される。
主人公の奥さんが夫に届けた弁当がある日全く見ず知らずの男性に届けられる。
近所の弁当屋から配達されたものだと思い込んで食べてしまった男性。その味付けに注文をつけたメモを弁当箱に入れたことから、2人の奇妙な文通が始まる。
夫と会話が無いこと、夫の浮気が疑われること…誰にも話せない心の痛みを彼女は手紙に綴る。
顔も名前も知らない、たまたま間違って弁当を手にした男性は彼女の話を聞き、彼女にアドバイスをし…
2人の距離は少しずつ少しずつ近づいていく。
しかし、互いに会おうと約束した時、男は気づくのだ。自分が既に人生の終盤に差し掛かり、初老と言える年齢になっていることを。
名乗ることもなく、待ち合わせ場所に出向き、遠くから彼女を見つめていた男。まだ若く、美しい彼女には輝かしい未来が待っていることに気づいて、声もかけず、仕事も辞め、彼女との接点を断ち切る。
あぁ、なんと切ない…
でも、なんて素敵な男性なんだろう。
文通だけとはいえ、彼と心を通じることができた彼女は幸せだし、人を見る目があるのね。
男との接点が切れた彼女の選択。
かつて、男と話した夢の生活。ブータンでの暮らし。彼女の選択。
そして、田舎へ引っ込もうとして舞い戻った男の選択。弁当配達員を探しあるき、彼女の元へ向かう。
間違った電車に乗っても、最終目的地にちゃんと着けば良いのだ…
そう彼女は言った。
ちゃんと到着できる目的地を共有できる人に会えた2人。
良い映画だった。この決断が新たな幸せの道に繋がる予感で幕を閉じる。
新しいインドの女性感。
観る人が今どんな環境にいて、どんな人生を送ってるかで、「マダム…」との最終決断の違いに印象を異にするだろう。
私はどちらも女性が自分の足で立ち上がろうとした作品として、好きだなぁ。