今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

あいつの声


四谷にある韓国文化院での定期上映会にて観賞。


作品自体は2007年のものらしい。日本では正規の劇場公開はされていないみたい。2011年に期間限定で上映されたようだ…


それでも注目度が高いのは、カン・ドンウォンが犯人役で出演しているからかな?


これがとんでもなく、珍しい出演の形。なんと、声と後ろ姿だけ‼


映画は実際にあった児童誘拐殺人事件をモチーフに製作されている。


親の氏名や職業はフィクションだとの断りが最後に登場するが、ラストで実際の犯人の声を流し、未解決の事件の情報を求める形で終了する。


これ、どこかで見たなぁと思ったら、ソン・イェジンさんが娘で、キム・ガプスさんがお父さん役を演じた「殺人の疑惑」がこんなのだった。


過去の未解決の児童誘拐殺人事件を追った映画を見た娘。その映画は、犯人からの電話の声を流し、犯人に繋がる情報を求める文章がスクリーンに映し出され終わる。


今回の映画と全く同じだ。「殺人の疑惑」はこの映画をモチーフにしたのだろうか?犯人の声が父と似ていることに気づく娘。そこから、物語が展開していくのだ。


とりあえず、あっちはあっち。こっちはこっちで。韓国ではこういう公共的な意味合いの強い映画がよく製作されるのかな…


誘拐から44日、87回の犯人からの電話。結末は最悪の結果となる。


父は人気キャスターで、高級マンションに暮らす少年。甘やかすだけ甘やかされた少年は少し太り気味。体のためという母親の厳しい躾で、エレベーターではなく、階段を駆け上がり、食事の前には縄跳びが日課になっている。


ある日、少年は縄跳びをしている最中に姿を消す。


家と自動車電話との2つを使い分け、両親を揺さぶる犯人。


父親の職業をあらかじめ知っての犯行だった。当然、父親への怨恨の線で捜査は進む。


キャスターという事実を追求する仕事をしている中で、彼は親友をも裏切る形で地位を築いてきた。


息子の解放だけが望みの両親と今後の事件続発を警戒し、犯人逮捕の上で子供の解放を考える捜査陣との微妙な食い違いが、犯人に隙を与え、いいように振り回されてしまう。


声門分析の結果、似た声の男を確保している矢先に犯人から電話が入り、結局捜査は振り出しに戻ってしまう。


それぞれが緊張状態を引きずりながら、迎えた44日目、少年が遺体となって発見される。鑑定の結果、誘拐されたその日に窒息死していたことが分かった。


犯人は、足でまといになる子供をすぐに手にかけ、何食わぬ顔で、両親から2度にわたり身代金を奪ったのだ。


この事件、映画公開直後はもちろんのこと、未だ解決されておらず、時効が成立したらしい。


韓国映画界は、こうした実際の凶悪事件を材にとり、フィクションとして描くことが特に多いような…


最近、ハリウッドを始めとする欧米も元ネタが実話って多い。ただ、こちらは事件より歴史的事実というか、歴史に隠れたエピソードのような…


なかでも、子供が被害者となる事件を題材にするのはそれなりに覚悟がいるだろう。事実は事実として、描くのだから…


「ソウォン」や「カエル少年失踪殺人事件」は観る方もかなり堪えた。この映画もそうだ。


この映画を観て思ったのは、映画って芸術として楽しむだけじゃなく、広く伝える情報源としての役割りも大きいのだなぁと。


昔、ニュース映画だって成り立っていたのだから…


映画のお話自体は、もう救いようのない悲しいもので、ただ、ただ最悪の結末までを見せつけられるので、はっきり言えば楽しくはない。


でも、手法として面白いと思った。


子供を持つ身としては、とても辛い映画だ。