今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

シーモアさんと、大人のための人生入門


ピアノ教師のシーモアさん。若い頃はピアニストであったけど、まだまだ現役を続けられる時期に後進の指導の道へ。


彼の指導風景、交流のある人との対話、そして、彼自身の語るこれまでの人生。


それらをシーモアさんの日常風景と交えながら…


監督はイーサン・ホーク。彼が俳優という仕事に行き詰まりを感じ、苦しんでいる時にシーモアさんと出会い、シーモアさんの穏やかな笑顔と人生観に触発され、再び仕事に邁進するようになったらしい。


シーモア「さん」というより、ピアノのお教室風景が流れるから、どうしても「先生」という雰囲気だけど、なにしろ、お顔が丸顔で穏やか、語りも優しく暖かい。


彼がスラスラっと鍵盤の上に指を走らせると澄んだ音がなる。それだけで癒し。


劇場の暗がりの中、別に寝不足でもないのに、シーモア先生の優しい語り口とピアノの音で眠くなってしまう。


シーモア先生のお話がつまらないんじゃなくて、その逆、あまりにリラックスしてしまい、眠くなる(笑)


教え子の指導をしてる時も、何度も注意して出来ない生徒に声を荒げず、ゆっくりと諭すように1つ1つ教えていく。粘り強く教えていく先生は、生徒が課題をクリアできるとしっかりと褒める。


人を伸ばす天才だ。イーサン・ホークは、自分の仕事の悩みを先生との出会いで克服できたので、その素晴らしさをカメラで追ってみようと思ったのかな。


戦時中、彼は上官に頼み込んで、各前線基地へピアノ演奏ツアーをした。普段クラシックなど聞いたことが無い人も多かったに違いないが、兵士達は大いに喜んだのだという。


シーモア先生が、音楽の持つ力を自分の目でしっかりと見届けた瞬間だ。


ピアニストとしての時間と後進の指導に力を注いだ時間。どちらも彼にとって、とても大切だったろうけれど、両方の経験があるからこその深い言葉がラストで語られる。「神」を外に求めるのではなく、自分の中にある(そんな趣旨のこと…)のだ。音楽による精神性の向上を言ってるのかなぁ。


具体的に音楽性を語れるほど、クラシックを知らない私としては、シーモア先生の明るい笑顔と確信ある言葉が音楽に限らず、真実を語ってると思う。


合わせて、彼の演奏も聴けるのだ。澄んだ音色も楽しめる。