今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

クワイエット・プレイス

私、ホラー映画は嫌いです。嫌いと言うより、恐くて寝られなくなるからダメなんです。声を出したら、即死亡っていう謳い文句を聞いたら、そりゃあ、オバケ系だと思うじゃないの!

ところが、とある映画評で、さもホラー映画のような宣伝が間違ってるという話を知り、ん?

ということで、90分という尺も理想的で、劇場へ。

人の姿が消えた街。壁には行方不明者を知らせるビラがいっぱいだ。かつては人の暮らしがあった街は、荒れ放題。その街を言葉を発することなく、素足でそっと歩く家族。

この街に何かあったこと、静かに息を潜めて行動をしなければ生きていけないことが、この家族の様子を見れば伝わってくる。

体調の悪い長男のための薬と生きていくために必要な物資を仕入れに来た家族が帰路につく。森を抜け、大草原にある家に。

まだ4歳の次男は、静かに暮らさねばならないことは知っているが、おそらく、なぜそうしなければならないのかまで理解は出来ていないのだろう。音の出るロケットのおもちゃを嬉しそうに手に取る。

息子の喜びが家族を危機に追い込む。父親に取り上げられたロケット。電池を抜いて、長女が小さな弟に手渡す。弟は大事そうに抱え、外した電池も握りしめる。

街から草原の家へ向かう途中、橋に差しかかり、ロケットの発射音が鳴り響く。凍りつく家族。両親と長男の表情に何か大変な事態が起こったと気づくがそれが何か分からない長女。彼女は耳が聞こえない。

そして、その音をたよりに何者かが森から次男めがけて飛び出してくる。それでも、叫ぶことが許されない。

こんなオープニング見せられたら、凍りつく事間違いなし。。。でも、オバケじゃないから大丈夫!なんだかワケの分からないものであったとしても、壁をすり抜けたり、スッと消えたりしないから、クリーチャー系なら大丈夫!実体の無いものがダメなのだ(汗)

こうして、この一家は大きな悲しみをもって生きていくことになる。

父親は2度と家族を失わないために敵の研究を重ね、母親は失った息子の影に苦しみながらも新しい命の芽生えに万全の態勢を取ろうと準備をし、長女は自分の判断の甘さが小さな弟の命を奪ったと自分を責め続ける。両親と姉の様子に心を痛め、自分のやるべきことに悩む長男が、ひ弱な印象ながら、最後に勇気を見せる。

過酷な生活の中にあっても、子どもたちをなにより大切に思い続けた父親の叫びが姉弟に智恵と勇気を与える場面は胸が締めつけられた。

ラストは過酷な経験をし、強さを手にした母の毅然とした目が印象的に描かれて終わる。強さを得た、これからの家族の暮らしが見えてくるようなラストが良い。

ホラー映画が好きな人はホラーと思わず、ホラー映画が嫌いな人もホラー映画とは思わず、劇場へ。今時、90分の上映作品なんて滅多にお目にかかれない。それだけでも、貴重な上にかなり上出来なんだから、もっと貴重!