今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

シェイプ・オブ・ウォーター


前日、アカデミー賞で作品賞を受賞したばかり。朝のうちはガラガラだった座席の埋まり具合も、夜の上映直前にはほぼ埋まってしまった。


ただ今、日劇も閉館し、TOHOシネマズ日比谷オープン前で、スカラ座&みゆき座まで改装中なので、有楽町で稼働してるのはシャンテだけ。前評判も高い映画なのに1日の上映が3回だけというのはいかがなものか。まぁ、頑張っても4回だけど(汗)。3スクリーン、それぞれに1本かけるという通常運用にしてほしい。評判の物は2スクリーン使うっていう奥の手とかあったよね。あれこれ抱え込んで、上映回数が制限されるのは観る側にも残念。そのための日本橋や上野じゃないのかと。。。


町山さんが怪獣映画の栄誉に涙を流すほどの歓喜の受賞(汗)。将来、ゴジラ映画がアカデミー賞を獲るのも夢ではなくなった世紀の一瞬だったわけで、その栄誉のおこぼれを頂戴しに行ってきた。


でも、これ怪獣映画ではないぞ(笑)!!ちゃんとした恋愛映画で、登場人物たちは子供の頃に読んだおとぎ話で触れたことのある立ち位置の人たちだ。ただ、姿や形がちょっと違う。でも、その違いがいかに大きいかを現代の問題と絡めて語ってる。


子供の頃の首に受けたケガが元で声帯を傷つけ、声が出せなくなった主人公。手話でのコミュニケーションは、言いたいことを伝えるのが大変だ。


とある国の研究所で深夜の掃除係をしている彼女には親友がいる。職場でチームを組むその親友は黒人であることで様々な差別を経験し、窮屈な毎日を送っている。主人公の暮らすアパートの隣人は、ゲイでどうもそれが原因で職場を追われたらしい。


こうしたツラい状況にある彼らの日常を変える出来事が起こる。


主人公の職場に、ある機密の物体が運び込まれる。水で満たしたタンクに押し込められたのは何なのか。好奇心旺盛な主人公はガラス窓を覗き込む。


そこにいたのは、全身うろこのような物に覆われた怪物(?)。手のひらを広げると指の間には水かきがある。彼も言葉を話さない。主人公はオープン(私から言わせれば、オープン過ぎる💦)な人で、その異人(ちゃんとコミュニケーションもとれ、感情表現も出来るのに怪物というのは失礼かもと思って、とりあえずこういう表現を用います)にも何の隔ても無く近づいていく。


他の人と違いがあり、他の人に劣っているとずっと思い込んでいた彼女をその異人は何の抵抗も無く受け入れる。平等、博愛とか言うけど、こういう姿こそだよね。


容姿や境遇、立場に関係なく、同じ立ち位置で接すること。これは簡単にはできないこと。それをこの2人はやってみせる。


珍しい生物を捕獲した程度にしか思っていない研究所のお偉いさん。生体解剖をしようと準備を始める。それを知った主人公は何としても異人を助け出そうと奔走する。研究所の博士はロシアのスパイで異人を殺して、アメリカの実績を消すように指示されるが、研究者としてはそんなことできない。そこで、主人公の計画に手を貸すことにする。


親友や隣人の手を借りて、決死の脱出を成功された主人公。


彼女は本当に愛する人に出会ったのだ。ファンタジーな世界だけど、それぞれに事情を抱え、悩み迷う登場人物たちの目の前に現れた異人は、白馬の騎士と言えないか。彼の登場で、大きく突き動かされていく主人公たち。


シンデレラや白雪姫に通じる世界だと思った。ただし、現代の問題も絡めてるし、なにより、騎士は水中生物なので、これをそのまま「おとぎ話」と受け止めることはできないけど(笑)。


おそらく、そうした内容からも好き嫌いがハッキリするんじゃないかなぁ。


冒頭、主人公の生活が描かれるけど、かなり生々しい「人間」が描かれる。ファンタジーならファンタジーで貫き通せと思う人もいるのではないか(汗)。そして、異人登場。彼は誰で、なぜ現代に生きてるのか。そうした背景が気になりだしたら、映画を楽しめなくなるんじゃないか。そういう意味で、賛否両論ありそうだなと。


描かれなくても何の問題も無いと思うことがサラリと、でもしっかりと描かれ、ちょっと気になってしまうことが全くスルー。そんな風に受け止める人も当然多いだろうし、そこで楽しみ方も違ってきそう。


私は「世紀の大恋愛」と思ったので、深くは考えなかったけど(汗)世間の片隅に暮らす女性が運命の人と出会って、恋に落ちる。そして…ってまさに恋愛映画だもの。そういう点ではストーリーは全くの王道だったな(汗)。というか、かなり「普通」。「パシフィック・リム」の監督だぞ!!それなのに、「普通」💦予想外なのは登場人物たちの設定なだけで。


ギレルモ・デル・トロ監督を大好きな人たちにはどう映ったかな、この映画。私はいつもの監督の作風を知らないから、普通に楽しめたけど。ちょっと変わった作品を提供してくれる人だと聞いたことがあるので、コアな人にはちょっと物足りないかもしれない。彼の作品を知らない人にはちょうど良い入口になったような気がする。私のように。