今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド


どっかのレビューで「シャロン・テート殺人事件」を描いた作品だと読んだ記憶があったが、別に事件そのものを描いたわけではなく、その人の直ぐ側にたまたま居た人たちのお話という形だった。


そもそも「シャロン・テート」自体知らない私は早速調べてみた。鑑賞前に予備知識として事件の概要ぐらいは知っとかないと。。。


調べてみたら、シャロン・テートの名前を知らなかっただけで、ロマン・ポランスキー監督の奥さんがカルト教団に殺された事件だったので、大筋は知っていた。


「ワンス・アポン・ア・タイム…」と始まるのは日本で言えば、「むかし、むかし、あるところに…」の意味だと不滅のギャング映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を見た時に聞いた。


本作は虚実織り交ぜながらの、まさにハリウッドの良き時代を生きたテレビ俳優のある時を語ったものだ。


アメリカはテレビ局も数多く、ブロードウェイに代表されるように芝居小屋も多い。そして、映画もとてつもないお金をかけて大掛かりに作る。だから、俳優はテレビの人、映画の人、舞台の人と立て分けているような話を以前聞いたことがあったが、最近では、デンゼル・ワシントンが舞台で主演賞を獲ったりして、横の行き来が多くなってきたようだ。


バリバリのアメ車が町を走る時代、まだ俳優の世界は縦割りだったようで、主人公はテレビの人気シリーズに主演し、自分の名前より役名で呼ばれるほど人々に浸透していたらしい。だが、時代はどんどん進み、新進の俳優が登場し、彼はいつしか主演俳優に敵対する悪役しか演じることがなくなってくる。


落ちぶれたテレビ俳優の豪邸の隣に、今をときめくロマン・ポランスキーが妻で売り出し中の女優、シャロン・テートと共に引っ越してくる。


今のままでは先が無い主人公はイタリアに活路を求めるが、結局、家を処分し、貯めた金で新しい生活に進もうと決意する。こうした栄枯盛衰を側で支えたのは、彼専属のスタントマン。いつでも、どこでも、主人公と同じ衣装に身を包み、待機する。


この深き友情の物語に、最後、嵐が巻き起こる。当時、ヒッピーが一大ムーブメントを巻き起こした。映画では、世間に底知れぬ怒りを抱いた若者たちが寄り集まって自堕落に時を過ごしていようにしか描かれてないけど、どうなのだろう。それらしいファッションが日本でも流行ったと聞いたことがあるけどね…実際に見たことはない(汗)。


彼らの怒りを買う主人公。そして、自宅を襲撃され…逆襲する…(!)。


かなり、ブラックなラストのバイオレンス・アクション。これはタランティーノ監督らしさなのかな。


映画前半は緩すぎるくらいのテンポで、正直ほんの少し気を許すと眠くもないのに寝落ちするような…絶好調の頃とそろそろお尻に火が着き出した頃と栄光と決別する決意をした頃。それぞれの1日を描いているわけだが、寝落ちして、どこか見落としてないかと心配になるほど、シャロン・テート事件に関係する流れが無い!


結局、シャロン・テートは落ちぶれていくテレビ俳優の対抗として、メキメキと階段を駆け上っていく栄光の存在として描かれたに過ぎないのかな。


最後の日。シャロン・テートは大きなお腹を抱え、友人を家に招き入れる。事件を知る者にはその姿は、彼女のその時を連想させるに違いない。「もう産まれそう」と幸せそうに呟く彼女。


ところが、事件はシャロン・テートの豪邸の門前に隣接する家で起きる。


ここにシャロン・テートを持ってくるのは、アメリカでは、彼女があの時代の寵児であり、それだけ異質な事件だったから、あの時代を描くなら、外せない人物ということなのか…


襲撃されたブラピとレオ様の反撃がハンパないのだが、これはちゃんと伏線があって、レオ様は以前の仕事の関係で手にしてた物、ブラピは町でヒッピーから買った薬を含んでいたことがちゃんと活かされてて、そこはさすがです。


ストーリーを丹念に追うというより、あちこちのエピソードを集めた話になっていた。これが「ワンス・アポン・ア・タイム…」の所以なのか。レオ様、ブラピ、それぞれに主人公となるエピソードがあり、シャロン・テートにも自分の出演作を客の反応を見ながら楽しむというエピソードが描かれた。3人の主役ということか。


かなり長い映画だが、飽きることは無いと思う。私のふとした寝落ちは単なるテンポの緩さからくる催眠術のようなものだ(汗)。ブラピが昔ロケをした農場跡にやってきた辺りから、イヤな予感がヒリヒリと肌を伝い、変な緊張感でドキドキとして、寝落ちなどしていられなかった。


その農場で登場したやさぐれた若い女リーダーがどう見ても、ダコタ・ファニングだったのにはちょっと悲しくなった。妹のエルは、いまや主演を張る立場。かつての天才子役にも栄枯盛衰と…


昔のドラマのシーンにレオ様を入れ込んだ映像はなんとも安っちく、ちょっと笑ってしまった。古い映像はエッジがぼんやりとしている上に色あいもぼんやりだ。その中に颯爽と登場するレオ様は輪郭も鮮やかで色あいもスッキリ。あれはわざとあぁしてるんだろうなぁと…結構、ブラックな笑いがそこかしこに散りばめられていて、なかなか独特な世界観だと思った。