今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

アド・アストラ


最近はプロデューサーとして多くの成功を収め、自分が表に出るより製作側に回る方に重点を置く意向を表明したと聞くブラピ。


その風貌から派手な役回りの似合う俳優さんだったが、つい先日鑑賞した「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」や本作を観て思うのは、年齢を重ね、良い役者になったなぁと。


その年齢相応の表情を見せる本作は、幼い頃に生き別れ、「死んだ」と自分に思い込ませることで、父への思いを封印してきた男の遥か宇宙の果てを目指した父親探しの旅を描く。


幼い頃の寂しさの象徴として、母親と抱き合う過去のフラッシュバックが多用され、自分の思う父親が「英雄」として皆に認識されている現実にどこか違和感を覚える表情が多く見られる。そんな構成のためか、ずいぶんと難しい解釈でこの映画を評するレビューを見かけることが多い。


ん〜。。。そんなに難しいかな。


ようは、父は死んだと思い込ませて、無理矢理自分を納得させて生きてきた男が、父と同じ仕事を選択して宇宙飛行士となり、その仕事の一環として、生きているかもしれない父親を探す宇宙への旅に出て、そこで、あらためて父への思いを…という父子の話だと思うんだが。。。


だから、映画は男の内面にスポットを当て、彼の心の声が進行をサポートする。この観念的な描き方は、そうだ、テレンス・マリック!って感じ。でも、宇宙を介在した親子の話となると、私は「インターステラー」の雰囲気を強く感じたなぁ。


父親が人類以外の知的生命体の存在を求めて宇宙に飛び立ったのは30年前。男はまだ小さな子どもだった。その後、長い年月をかけて銀河の果て、海王星の近くに到達した父親たちクルー。ところが、16年前、父親たちからの通信が途絶えてしまう。


以後、行方不明として扱われた父の存在。男はその時27歳になっていた。


彼に父の存在を再度認識させたのは、地上で起きたサードだかサーズだか(細かいこと忘れちまった…汗)の電磁波パルスみたいな衝撃で多くの人々が亡くなった事件で、軍の幹部から秘密裏に呼び出しを受けたことがきっかけ。


その電磁波は、遥か海王星付近から地球に向かって投じられているらしい…


そこで、彼は、父親は宇宙で某かの事件があって、行方不明になったわけでなく、自ら通信を切って今日を迎えていることを知る。そして、父親が地球に危害を加える目的で今も宇宙に居続けている…という見解を聞かされるのだ。


時代は近未来。宇宙開発は今より格段に進んでいて、月なんて、その利権争いが勃発するほど身近になってる。そんな時代の親子の隔絶はやはり地球と海王星くらい離れてなければ成立しないのかも…となると宇宙が舞台でもそれが重要なポイントとは言えないんじゃないかなぁ…


確かに宇宙の描き方は素晴らしい。すごく壮大で無音の世界が展開する。それは最近で言えば「ファースト・マン」的な…


宇宙での時間の感覚。さらには宇宙服だけで宇宙空間を漂う不可思議さ。いろいろ、本当のことに思い至る人にはツッコミどころは満載なのかもしれないが、父子の歴史を語る上ではあまり気にすると本筋を楽しめなくなる。


ただ、ただ、壮大な宇宙を舞台にずっと追い求めた父親の姿に狼狽える息子の、人生の区切りの付け方を見つめる映画だと思う。


強く強く追い求めた割には、父ちゃんが軽〜く登場してくるのはちょっと興醒めではあったが…(汗)。


父親も父親で、もう既に知的生命体の探索に限界を感じながらも区切りのつけられないところまで追い込まれていたようだし、16年前に起きた艦内での暴動(あくまでも父親が言う「真実」であり、事実は不明…)で発せられた電磁波みたいなものが長い長い年月をかけて、息子が父親と同じ仕事についた「今」地球に到達した。


ドラマチックだなぁと思う。宇宙と地球の時間と力量の違い。そこに父子の思いのベクトルの違い。そう考えると、これは宇宙を舞台にしたからこそ成り立つ世界なのかもしれない。


面白かったし、なにより映像が美しい。ブラピ映画では「セブン」、「フューリー」に匹敵するほど私には良かった!


そうそう、「2001年宇宙の旅」や「地獄の黙示録」を連想させるシーンがあるんだそうな…残念ながら「2001年…」は見たことないし、「地獄の黙示録」とは舞台も時代も違うので、深堀りして観ない私にはちょっとピンと来なかった。私にはどこまで行っても「インターステラー」だった。


ちなみに、原題をカタカナ読みにした邦題の「アド・アストラ」って、ラテン語の「per aspera ad astra」(困難を克服して栄光を掴む)というローマの格言に由来するらしい。この格言の後ろ半分を最終的には「空の彼方へ」とか「星の彼方へ」という意味に捉えるのだとか…


確かに「星の彼方へ」という邦題にしてたら、ちょっと違うよなぁ(汗)。