今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ナポリの隣人


岩波ホールで鑑賞。前回の岩波ホールでの鑑賞の際に観た予告編が気になっていたので、行ってきた。


昨年も岩波ホールのチョイスはずいぶんと私にハマった。前作はそうでもなかったが、本作はとても良かった。


最近、血の繋がりばかりが家族の形ではないというメッセージ性のある映画が多い気がする。アメリカだけじゃなく、ヨーロッパ映画でも観た。


多くの民族が行き交い、移民や仕事での移動など国を跨いで行動する大陸系の人々の感覚で言えば、それは普通のことなのかもしれない。


劇中で「ナポリ」はよそ者に厳しいようなことを言っていた。特に昔からの街は、日本だってそうだ。新しいものは人だろうと物だろうとおいそれとは受け付けない。


そんな街に引っ越してきた若い家族。隣人は今にも死にそうな老人だと聞いていたが、なんとか無事に一人で生きている。


中庭越しに交流が始まり、子供たちは親より老人になつくほどになるが、その辺りからなんだか不穏な空気が漂い始める。


子供をほったらかして、ラジコンで遊ぶ父親。子供たちが部屋で退屈を持て余して昼寝をしてる横で老人に自分達の馴れ初めを聞かせて喜ぶ夫婦。なんだか、どこかチグハグな感じをこの家族から受ける。


暇を持て余し、街をぶらついて時間をつぶしていた老人が隣人との時間を持つことで生活に変化が起きた。新しい隣人と新しい関係が出来た頃、老人は自分の家族との関係に悩んだりする。


家族とは支えにもなるけれど、差し支えにもなる存在。互いにそれぞれの生活に追われるといちいち気にも留めない相手だが、ふと自分の人生を振り返る時には必ずや大きな存在としてそこにいる。


隣人には素直になれた老人だったが、自分の子供たちには距離を置いてしまう。そんな時に事件は起きる。心の支えになりかけた隣人一家が突然目の前からいなくなってしまう。それも彼らが纏っていた不穏な空気が爆発して…


隣人の突然の不幸が、老人に家族を振り返るきっかけを与えた皮肉。


その不幸の描き方も上手いと思った。けして、その場面を見せることなく、感じさせることで観る側に伝える。セリフもそうだ。言葉を並べるのではなく、登場人物たちの表情や彼らの醸し出す雰囲気で多くを語っていた。


脚本の出来なのか、演出の妙なのか。役者だけでなく、作り手の上手さも感じる映画だった。


ただ、やはり明るい映画ではないけれど。