今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

グリーンブック


前評判も良かったし、アカデミー賞作品賞の筆頭だと聞いてたので、楽しみにしてはいたのだが、かなり評判の良いアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」がNetflix映画として初めて作品賞を取るかもとの話題が急に持ち上がってきたので、はてさてどうなるかと。。。


でも、蓋を開けてみれば、誰が観ても感動し、考えさせられ、納得のできる本作がオスカーを取った。


そして、そのアカデミー賞明けの週末に公開というなんとも絶好のタイミング。でもねぇ。これ、劇場が混むという結果になるよねぇ。。。


鑑賞したシネコンでは1番大きな400席近いスクリーンでほぼ満席。そして、観た人、ほとんどが観て良かったと思える映画だと思った。こんな映画は久しぶりだし、そういう映画がアカデミー賞作品賞を取るのもまた久しぶりな気がする。ザ・王道!


生真面目な黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー。彼は、その才能を子供時代に見出だされ、黒人社会とは隔絶した場所で生きてきた。彼が活躍した時代は、まだ南部の街では黒人差別が厳然と残っていた。そんな中で、南部の白人富裕層は黒人への理解を示しているという姿勢を見せることで、自らの権威を守っている。


自分を利用しようという富裕層の思惑を知りながらも、シャーリーは南部への演奏旅行に出ようと決意する。誰かが道を開かねばならないから。


その旅で運転手兼ボディガードとして雇われたのがイタリア系移民のトニー。とにかく粗野で下品なんだけど、明るいし、正義感が強い人。そして、素晴らしいものは何をもっても素晴らしいと認める公平な目を持った人。これは凄いこと!


旅の最初は、きっちりかっちりのシャーリーとなかなか上手くいかないトニーだが、自分の耳で彼の演奏を聞いた時、素直にその素晴らしさを認め、その感動を妻に手紙で伝えるのだ。トニーの長旅の最中、家を守る彼の妻。とても賢く理性的な女性で、人種差別などしない、ある意味先進的な感性を持った女性なのだ。


シャーリーに対して、凝り固まった差別意識の抜けない南部の富裕層と対比して見せるトニーのまわりの人々。映画では一面的に描かれているので、全てがそうじゃないとお小言もあるかもしれないけれど、差別の本質を知らない私たちにも分かりやすく描いてる。


差別に対して毅然とした姿勢で向き合うシャーリーの物語ではあるが、全く正反対の性格のトニーが彼の日常に関わることで、二人の間に少しずつ柔らかな空気が流れるようになっていく。


互いの違いを認め、それが自分には無いものだと気づき、ほんの少しの勇気をもって、一歩を踏み出すことでさらなる理解と信頼が築かれる。


差別に対する警鐘を含むお堅い真面目一辺倒のストーリーではない。二人のやり取りが笑いを誘う。かっちかちの堅物シャーリーがトニーの勢いに巻き込まれ、差別を描く映画なのに笑えるシーンも多く、肩が凝らずにゆったりと楽しめる。


ほんとに素晴らしい映画だった。暖かい気持ちになれる気分の良い映画だった。