今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

人間失格

丸の内ピカデリーでのジャパン・プレミアに参加させていただきました。舞台挨拶付き試写ということで、登壇者は、監督の蜷川実花さん、主演の小栗旬くん、沢尻エリカさん、二階堂ふみちゃん、成田凌くん。


小栗旬くんは、まんまカッコいいお姿でスーツがステキ!そして、成田凌くんは小栗旬くんよりちょっと背が高いくらいのスラリとした青年でした。


沢尻エリカさんは、すっかりベテランの域に達してるような、自由奔放で楽しそうで、良い仕事してるんだなぁと感じさせる。二階堂ふみちゃんは、あのパワフルな全力投球の演技からは想像できないほど、控えめで小さな声でお話をされる人。成田凌くんは独特の雰囲気を持つ人、伸びやかに舞台に立ってる様子が覗える。


そんな皆さんの挨拶を受け、本編へ。R指定、しかも+R15が付いてるのだが、場内には若い女学生さんたちも多くいて、彼女たちがどんな反応するのかなぁと…


正直に言えば、ハリウッド映画での+R15となるとかなり過激な描写もある。それは性描写だけでなく、暴力描写も。どちらかと言えば、最近は暴力描写や薬物関係の描写に、より厳しいR指定が付いてるような印象を受ける。


その点で言えば、それほど太宰治と女性たちの絡みはハードではなかったように思うけど。少なくてもボカシは無かったし(汗)。松坂桃李の「娼年」を見た後では普通にそう思うよなぁ…(汗)。でも、絡みシーンは見たくなかったとか言ってる女の子の声が近くで聞こえた。小栗旬くん、成田凌くん、もうアイドル俳優と言える年齢はとうに脱したと思うけど、ファンは違うのねぇ(笑)。


太宰治さん、映画になってるので、当然フィクションもあろうかと思うけど、まぁ、自分の作家としての欲求を満たすためなら、お好きに気ままに生きてる人だったのね。危なっかしい上にはた迷惑な…


太宰治の著作は1冊も読んだことが無いので、それと絡めて判断できないのがちょっと残念。


全くの無から作品を生み出す作家もいるのかもしれないけど、その場合は自分の体験として意識に刷り込むくらいに徹底的に取材すると聞いたことがある。やはり読む者を打ちのめすほどの言葉を紡ぎ出す作家は、自分の人生を切り売りすることになるんだろうなぁ。


余談だが、以前、柳美里さんが小説内の描写で訴えられたことがあったな。私は彼女の著作は読んだことが無いので、どんな作風の人が全く知らなかったのだが、小説に登場した人物について、そのモデルを容易に想像できるとの訴えだった。柳美里さんを知る人たちなら、小説を読んだ時にピンと来ると。それが本人にとって作品内での公表が不本意だということになったらしい。彼女も自分の血と肉を言葉に替えていく人だったのだろう。


太宰治の生きた時代はある意味おおらかな時代だったのだと思う。だから、破天荒な人生でもなんとかやって行けたんだろうなぁ。今の時代なら、どれだけ訴えられてたか(汗)。


蜷川実花監督は、そのフォトグラファーとして作品を見れば分かるが、華やかで艶やかな「色」を全面に押し出してくる印象がある。「ダイナー」もまさにそんな映画だったけど、本作はちょっと違う。太宰治が生きた時代、その生活の中に、あんな艶やかな「色」は無い。舞台装置にそれらの「色」が登場してこないとなれば、女優陣の服装で「色」を見せる。それは美しい。


派手なパーツは沢尻エリカさん、派手というよりくっきりと芯のある出立ちは宮沢りえさん、そして、まとわりつくような情念を感じさせるおどろおどろしい色目は二階堂ふみさん。そんな色分けで演出されてたような…


世界で1番売れてる日本の小説だという「人間失格」を太宰治が書き上げるまでの物語。ただ流れに身を任せてフラフラしてるだけの人かと思えば、子供が関係してることには妙に従順だったりする。妻に構ってほしくて、夜中に大声をあげるところなど、子供のまんま。これを彼の魅力というのだろうか…


3人の女性が絡む太宰治の人生の最終盤。3人が3人ともそれぞれ太宰治を愛したようだけど、太宰にとっては、どれも十分ではなかったのだろうと思う。彼には求めることが多くて、それを全て1人で与えてくれる人はいなかったんだろうなぁ。作家の利点を活かし、言葉巧みに人を手玉に取るタイプではないようだし、ただモテたってだけなら、こんな小説より奇なりを地で行くような人生は送らなかったろうし…


着物姿が妙に様になる小栗旬くん。銀さんの時は本来そうでなければならないはずの死んだ魚のような目をけして見せなかったのに、太宰になったら、ずいぶんといろんな表情を見せていた。怒りより、何かどうしようもないものに抗えない気力を失った目…


相変わらず、小栗旬くんの存在感たるやお見事!女優陣も素晴らしかった。成田凌くん、これから注目します。監督、お疲れ様。