今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ゴールデン・リバー


邦画タイトルからして、ゴールド・ラッシュに湧く時代の西部劇かと勝手に思い込み、出演者に惹かれて観に行ったのだけど、最初にスクリーンに登場した原題の「THE SISTERS BROTHERS」を見て、なんじゃこりゃ的な(笑)。


英語は苦手な私は、パッ見直訳で「姉妹、兄弟」って原題にあ然とする。本編を見れば主人公の男性2人がシスターズという名字のご兄弟ってわかるけど(笑)。


実は上映を待つ間、すぐ近くに老人夫婦がいた。二組で連れ立ってきたらしいが、一組がトイレに行ってるのを待ってたようだ。エンドロール前に退場して来たらしいそのおじいさん。


ぶつぶつぼやいてる。ため息交じりに「わざわざ出かけてきて、金を払って観た映画がこれではダメだ。山田洋次のようにしっかりした映画を上映しないと」と…小さなロビーで、これから観ようとする人間のいることを知りながら、聞こえよがしに言ってるおじいさん。お前、どんだけ偉いんだよ!「おまえこそダメだろ!」と心のなかで毒を吐いたが、さすがに人生の先輩であるお年寄りに面と向かっては言えない。そしたら、隣にいたその奥様と思しきおばあちゃんが物凄いツッコミ。「あなたの映画の基準は山田洋次なんですか?」と。あんまりびっくりしてるのも悪いのでそっぽを向きましたが…(笑)。笑いそうになって困った。山田洋次が基準だとそこら辺で上映してる映画、全部ダメだろ(爆)。


つまり、頑固一徹系で山田洋次が映画の基本な人には受け入れられない映画だと言うことが鑑賞前に分かってしまったという…(汗)。


お話は西部劇の時代。父親の暴力に耐えかねて、町へ出たシスターズ兄弟。そこで生きていくために、町を牛耳る総督(あの時代は単なる悪の首領ではなく、行政官として町を統制してたようだが、そのためには手段は選ばない!)に仕える。


ゴールド・ラッシュに沸く時代とあって、砂金を簡単に探せる薬品を開発した男を捕らえるよう言い渡された2人は、別ルートで追っている男と連絡を取りながら、遥か遠方までやってくる。


どこに正義があるとか、見慣れた西部劇とはちょっと違う。っていうか、ただお話の舞台が西部劇の時代というだけだ。


生きていくために殺し屋となった兄弟が、最後に行く着く先。掟やシガラミに雁字搦めになりながらも、最後はそれを断ち切ろうと先延ばしにしていた決意を見せ、兄弟がしっかりと歩みを揃える。その時、彼らの人生は大きく開けていく。そして、2人が、本当に生きてることを実感できるのはあそこしか無かったという話だ。


西部劇なのに派手な殺し合いや正義のための雄叫びもなく、「王道」を期待する例のおじいさんのような人にはちょっと馴染めないかもしれないけど、それは邦題のせいだから。ちゃんと「シスターズ兄弟」としておけば、兄弟の物語として受け止められたのに…まさに兄弟の物語だったし。


淡々としてたけど、家族の物語として、良い映画だったと思う。なにより、ラストでお兄ちゃんがベッドに寝転んでる時のあの優しい笑顔。幸せとはこんなふうに表現できるんだなぁと。


あのおじいさんが、この映画の面白さを理解出来てないだけだったんだな(笑)。長く生きて、人生の酸いも甘いもいっぱい学んできたはずなのに、ホントに可哀想な人だ(汗)。隣に座ってた奥様のこれまでの苦労が偲ばれる。ホント、こんな人は映画を観に来なきゃい〜のに。