今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ブロードキャスト


新選組関連本もずいぶん読み漁り、気軽に読める分量の物より、分厚い本ばかりが選択肢に残るようになってきたので、少し気分を変えて…


救いようがない小説の王者、湊かなえさんです!


「ブロードキャスト」湊かなえ 著(角川書店)


以下、感想。。。

















主人公は、中学3年生の男子。たまたま、声をかけられた同級生に誘われて入部した陸上部で全国大会へあと一歩のところまで行ったところから話は始まる。


そして、推薦入学で陸上強豪校に進むことになった陸上部のエースである親友に誘われ、一般入試で同じ門を潜ったのだが、彼は合格発表の日にひき逃げ事故にあい、大切な足を傷つけてしまう。


何のために死ぬほど勉強して、この学校の生徒になったのか。覇気もなく、ぼんやりと始まった彼の高校生活にまた再び、すっかり忘れていた、いや、心の奥にしまい込んでいた陸上に賭けた熱い思いと同じような熱気が蘇る事件が起きた。陸上を共に励んできた親友とは全く関わりのないところで、それほどの出会いが…


読み始めて、これ、湊かなえさんの小説だよね?と何度も思った。「湊かなえ」と書いて、「瀬尾まいこ」って読むことになった?とか(笑)。


それほど、瀬尾まいこ色の強い(汗)作品で、「イヤミスの女王」がどんな方向転換したのかと(笑)。


でも、実は湊かなえさんの小説は、苦境に陥った主人公の再生物語でもあったりする作品がいくつかあるので、それをさらに明るく、ミステリー色を排除して構築すれば、こんな小説になりそうだ。


内容が内容だけにサラリと読めて、読後感も救いようがバッチリで、スッキリと爽やかな風に吹かれたようだ。


高校の放送部の大会の有り様については、小説だから、どこまでホントかは分からないけど、運動部顔負け、大人顔負けの熱く真剣な戦いが繰り広げられる。


放送コンテストの題材として、イジメや過疎化の進む町など今現在の社会問題も主人公たちが取り入れて作品作りをする姿など、高校生を主人公にしたとしても、十分、社会は語れるんだなと思う。


なにより、主人公がたった数ヶ月の間におおきく成長していくのを感じられるのが、この小説の楽しみでもあった。充実した日々を送るうちに自分の中で起きていた変化に気づくのが遅くなったけれど、しっかり、足元を見据えて、「次」を見出すことを決意する。


こんな爽やかな読後感を味わえる日が来るとは、湊かなえさん、ありがとう!