図書館で待ちに待って、やっと手にした。その割にあっさり読めた。そして、あっさり読んだ割に感動して心が暖かくなった…
「傑作はまだ」瀬尾まいこ 著(エムオン・エンタテインメント)
以下、感想。。。
結局、いつもの瀬尾まいこ節というか、瀬尾まいこの世界にあっさり、でも中味はどっぷり浸からせてもらった。
瀬尾さんの描く「人」は、ちょっと変わった人たちだが、とても純粋な人が多い。そして、真面目に生きる人たち。
この世界の片隅で、普通に暮らす普通の人たちのお話だが、心がギュッと鷲掴みにされるのはなぜだろう。
ほんとに身近な生活に根ざしたストーリーだから、もしかしたら、読む側にところ違えば「これは私かも」と自分の別な場面を想像させるからかもしれない。
そして、結構理不尽で苦境な立場にあっても、徹底して不幸を描くのでなく、そこからちゃんと生きていこうとする人を描いてる。そして、登場人物たちがみんな良い人なのだ。
まぁ、出来過ぎと言われてしまえばそれまでだが、昨年「バトンは…」で多くの支持を得たところを見ても、世間から見れば不遇な環境にあるそうした良い人たちが明るく生きる様を読みたい人は多いのだ。ちょっと出来過ぎだって良いのだ、小説なんだから(笑)。
辛く暗い世相に添うように、様々な陰惨な事件がニュースになる。それらに囚われたままで終わりたくない大勢の人たちがいる。あの事件も、この事件も、もし誰か1人、瀬尾さんの世界観に登場するような「良い人」がいたら、結果は変わっていたかもしれないと僅かな希望に救いを求めてしまう。
生まれて25年。一切、父親と交流の無かった息子。父親の存在を知らせながらも一切の交流を絶ってきた母親。そして、自分の両親とも、息子とその母親とも交流することなど一切考えて来なかった主人公。
それぞれの25年。それでも時はちゃんと流れ、人は生きている。その間の苦労や悩みなど一切覆い包むほどに25年という年月は長い。
それをスッと通り越して寄り添えるのは単に「血」の問題ではないと思う。それぞれがみな「良い人」だからだ。
この度もいろいろ唸りながら、あっさり読んで、たっぷりの感動をもらった。