今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢


たまたまTOHOシネマズデーと重なり、たまたまヒュートラ有楽町はケン・ローチ監督の「家族を想うとき」の公開時期と重なり…有楽町界隈の映画館は激混み。。。


観たい映画の候補、上から数えて何番目だったかの本作と同じ位の「再会の時」もあったのだが…私の都合にあったスケジュールは本作だけだったので、角川シネマへ。


第一候補ではなかったけれど、結果的にはとても良い映画を観ることができた。


いつどこで聞いたのか、どこかの国の片田舎に郵便配達員が自力で建てたお城があると…何年も何年もライフワークのような作業。独特の装飾は全て自分で考え出したものだと…そういう建物があると聞いていただけで、現物の写真や建物の名前など全く知らなかった。


この映画の紹介記事をチラリと読み、「郵便配達員」「宮殿」という言葉を目にして、「あぁ、この話はそれか!」と。


人との付き合いがとても苦手な主人公の郵便配達員。妻が亡くなっても、涙1つ流さず、ただじっと人から離れたところで見送ろうとしている。そんな父親に残されたのはまだ小さな息子が1人。しかし、郵便配達員として1日中歩き通しで家を空ける彼に子育ては無理だろうと決めつけられ、息子は有無を言わさず親戚に連れて行かれてしまう。


たった1人になってしまった主人公。局長の計らいで、配達ルートか変更された先で、最近亭主を亡くした女性と出会う。


結局、主人公は彼女と出会うことで、それまでの不器用な生き方に少し変化が芽生え、彼女が深く理解し、寄り添うことで生き抜くことが出来た。


妻との間に生まれたアリス。何もしてやれなかった先の妻との息子イリスへの罪滅ぼし的な意味もあったのかもしれないが、主人公は娘を深く慈しみ、彼女をお姫様に喩え、彼女のために宮殿を造ろうと決意する。


貧しい暮らしを支えるため、家の前の僅かな土地で野菜作りを始めた妻。しかし、主人公は妻の思いなどお構いなしに畑を荒らし、山で拾ってきた石を積み始める。


村の人々も郵便配達員が宮殿を造るなど考えが及ばず、からかいの対象にしかならず、皆から侮蔑される。


夫の突然の奇行に妻は酷く悩むのだが、それが、口下手で感情表現が苦手な夫の精一杯の家族への愛情表現だと気づいた時、娘と共に宮殿の完成を待ちわびるようになる。


ところが、その最愛の娘が病で亡くなってしまう。苦しむ主人公…そこへやってくるのは、かつて生き別れになった息子だ。自分の娘にアリスと名付け、父親の住む町の近くに戻ってくる。


やっと立ち直りかけた時…今度はイリスが若くして亡くなってしまうのだ。近くにいながら、何もしてやれなかった後悔に苦しむ主人公。


彼には宮殿を造るしかその悲しみに打ち勝つ方法がない。そして、とうとう愛する妻が先立つことになった…


不器用で人付き合いが苦手な主人公が、彼を愛し、理解してくれた家族を見送った日々。彼の愛は言葉でなく、宮殿として後世に残された。


こんな深い愛情表現があるのだなぁと…じわじわと心に押し寄せてくる主人公の家族愛。とても、暖かい、心が豊かになる映画だった。


建築の基礎知識も無いのに、何事も学べは出来るという確信で1つ1つ形造っていく主人公の粘り強さと信念の強さには畏れ入る。まさに「奇跡」を観る映画とも言えるのではないだろうか。


11月末から突然の肩痛、いわゆる四十肩、五十肩というヤツに利き手を苦しめられ、やっと無理をしなければ、箸が持てるまでに回復してきたけれど、やっぱり寒い朝は腕が「どんより」と重い…


そんなこんなで遠出も出来ず、家の都合にも振り回され、もしかしたら、今年の劇場観賞はこれが最後かも…何年か前には年間鑑賞数100本を越える年もあったけれど、今は平均すると週にやっと1本換算程度…見逃し映画が多くて悲しくなるわ…