今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

パラサイト 半地下の家族


ポン・ジュノ監督最新作でカンヌを取った作品。ちなみにアカデミー賞では、外国語映画賞に留まらず、なんと作品賞にノミネートされた。素晴らしい!韓国映画の底力を見せた結果だ。


韓国ドラマは情念が渦巻くドロドロ愛憎劇だったり、そんな事あるかいって何度もツッコミを入れたくなるような超夢見る女の子のラブコメだったり、その振り幅は極端に過ぎる気がして、ある日突然興味を失ってしまった(汗)。


ところが、テレビドラマにはかなり制限の多いらしい韓国も映画についてかなりアバウトだ。香港映画さながらに単なるアクションに留まらない日本で言うところ任侠映画風の題材も普通に作られている。


そこへ行くと最近の邦画はテレビドラマの延長だったり、漫画、それもメロメロの学園恋愛物が次々と役者の顔を替えて作られる。こんなに毎月似たような映画が公開されて誰が観るんだろうと思うほど…


そんな夢見る夢子ちゃん映画でないものもしっかりと作られてはいるが、シネコンの登場で、ズシンと残る映画に居場所が無くなってきてるのではないか…


そこが韓国映画との大きな差なんだろう。


昨今の韓国の意味不明な日本への対応の数々。確かに国としてはお粗末極まりないが、こうした文化を生み出す力があるクリエイターがいるのも確か…


ただ、ポン・ジュノもいつも良い映画を作ってるわけじゃないよ。「スノー・ピアサー」は大騒ぎした割には私的にはチャンチャンって感じの映画だったし。ユチョンが出演した「海にかかる霧」は記憶にも残らない感じで、まぁ、ユチョンが出てるから日本で公開したんだろうな的な…


今回は韓国の格差に根ざしたテーマだから、より身近により繊細に描けたのではないかしら。そういう意味でお見事と言えるかと。今の日本の様々な問題点を本作のように切り込める日本人の映画監督はそうそういないだろうし…いるのかも知れないけど、日本人の私達の目に触れる機会が少ない…んー…何と言えばよいか。。。


そうだ!こう言えば良いのかな。社会問題に目を向け、それをしっかりと描きながらもエンターテインメントとしてシネコンにかけられる映画に仕上げてみせる監督…ポン・ジュノはそんな監督なのかも。日本では社会問題に切り込んでいく作品となるとドキュメンタリー作品が多く、しかもミニシアター系で単館上映が多くなる。


本作は普通に面白い映画だとは思ったが、終映後に拍手するほどではなかったと思う。多分1人だとは思うが、終映後に拍手してる人がいて、まぁ、作品の好き好きはその人それぞれだから仕方ないとは思ったが、よほど出演者誰かのファンなのか、ポン・ジュノが好きなのか、はたまた韓国好きなのか…もう少し面白い映画を数こなしてから劇場来いって思ってしまった(汗)。


小さな伏線が終盤で回収されて、アボジの居場所が分かるというラストも良い感じだが、正直、あの豪邸にこんな秘密があるのなら、序盤の諸々はもっとあっさり片付けてほしかった。長い、長い。それに伏線かと思うフリのあった物(物事)が、全く触れられることもなく、放ったらかしって場面が意外に多くて、それに気を取られてしまって、気が散る映画だった。結構、雑な仕上げだなぁと思ったのも事実。良くできるとこと大雑把なとこ、その差がなんだか気になって仕方なかった。これも格差?って(汗)。


内容については、いろいろ思うところもあるなぁ。韓国ドラマもそうだけど、ことさら「格差」については結構シビアに描かれている。その「格差」故に様々な物語が生まれるわけだ。


半地下の部屋に暮らし、仕事にも恵まれず、日銭を稼ぎ、人のおこぼれに与ることも厭わない。彼らの生活に染み付いた物を独特の「匂い」として表現したのは、かなりキツいと思う。どんなに背伸びして繕おうとも繕うことの出来ない生活に染み付いた澱のような…


対比される金持ち家族が、嫌味なくらい純粋培養な人たち(けして、良い人たちという意味ではない!)だから、なおさら堪える。実は人間の本性を描いた映画ということかな…


主人公家族は半地下だが、途中登場する全く地下の家族。彼らの頭上に暮らす大金持ち。その家は陽が燦々と降り注ぐガラス張りのリビングある。これは陽のあたる場所で生きることの象徴なのかな。


主人公家族が大金持ち一家に寄生していく過程も面白かったし、それで終わるのかと思ったら、後半は怪しい登場人物が突然顔を出し、全く方向の違う映画になっていった。これをどう思うかで評価は違ってくると思う。


私が「普通に」面白かったと思った一因がここの部分。