今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

桃山ー天下人の100年@東京国立博物館・平成館


東京都美術館での「浮世絵展」は会期中盤で見たけれど、国立西洋美術館の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は夜間公開もあるから大丈夫とタカを括っていたら、事前予約でチケット完売という…(涙)。


だから、「桃山展」はちょっと急ぎました(汗)。でもねぇ、入場料2400円はなかなか半端ないです。レディースデーに映画を2本観られるし、上野動物園の年間パスポートの料金と一緒。ちょっと清水の舞台って感じ。


でも、「トーハク」は特別展の入場料で常設展示も観覧できるし、博物館所蔵品の企画展も鑑賞出来るから、確かに有意義ではある…


本展の感想の前に…


事前にちゃんと調べておかなかった私が確かに悪いんだけど、CMか何かで見た聖徳太子VR鑑賞や金屏風の映像展示は事前予約が必要だったり、トーハク開館時でもお休みがあったり、しかもそれなりに別料金とったり…など、結構ふらりと楽しめる場所ではなくなっていた(汗)。


散歩がてら上野公園に行って、美術館でも覗いてみようという昔の風情はもう無いのだ(涙)。私が行った時は金屏風の映像はお休みで、聖徳太子は予約完売。まぁ、コロナの件があるので、様々予約入場は仕方ないとはいえ、世の中は急激に変わっていってるのだと実感。


さて、「桃山展」。そうか、あの時代には総称する呼び名が無いのだな。元号天皇が代われば、それに合わせて代わってはいたんだろうが、1つの時代としての総称が無いのだな。鎌倉時代が終焉を迎え、各地で国を治めるほどではないけれど、それなりに有力な一族が勢力を伸ばし、まさに群雄割拠の時代。


そんな時代は武具など戦う道具も進化するだろうが、人の暮らしも大きく変化する。


その時代を見つめた絵師たちの作品が並んでいた。とにかく、金屏風!国宝や重要文化財に指定されるとその修復も大変なんだろう。「ちょっと金箔が剥がれてきたから修復しときます」ってワケにはいかない。


時代と共に当然ながら進んでいく劣化や色落ち、色焼け…いかにダメージを減らしながら、保存し、展示するのか。日本には多くの文化財がある。国宝や重要文化財に認定されても、それに見合う保存が為されているのか…まぁ、そのための公開展示と思えば、多少の入場料は仕方ない。


実は、私の母の実家が茅葺き屋根の家だった。私が小さい頃に近くに家を建てて引っ越したのであるが、祖父からこの家を引き継いだ母の兄は父親の残した家をそのままにした。家のすぐ裏に広い自然の竹やぶがあり、家の前庭には大きな柿の木が毎年元気に実をつける。誰も暮らすことはなくても、祖父が建てた家を叔父は守った。農家なので、その仕事の合間に家の管理をしていた。茅葺きも雑草が生えてくれば駆除して、葺き替えた。


そうこうするうち、近隣は後を継ぐ者がいない農家が土地を手放し、新しい住民が増えていった。通学路にある茅葺き屋根の家。子供たちの口から伝わったのか、最初は地元の小学校から見学の依頼があったらしい。茅葺き屋根なんて見たこともない子供たち。そして、行きつく先は市の教員委員会。市の文化財指定をされたらしいのだ。叔父は農家の人だ。天候や土地の具合と作物の出来に関することなら、なんでも知っているが、役所のことなど分からない。あれよあれよという間のことだったようだ。


そして、雑草が生えてきても刈り取れず、葺き替えも勝手にできなくなった。一応、市への連絡が必要になったらしい。でも、家の維持管理は費用も含めて叔父の責任だった。叔父は最晩年を茅葺き屋根の管理人として過ごしたが、それが叔父が思った通りの暮らしだったかは分からない。


国が指定するほどの史跡名蹟ならいざ知らず、普通の暮らしの中にある文化的な財産は持ち主の意向にそって、行政が手助けをしながら、地域の文化として守り続けてもらいたい。しかしながら、「桃山展」の展示物においても個人所有の物が多くあった。その後、人の手を通って、所蔵美術館、博物館にたどり着いている。その最初の個人にそれらを維持管理できる器量があったから、現在私たちが目にできているのだが…


叔父の茅葺き屋根の家はその後どうなったのだろう。叔父が亡くなって、その息子の代になってからはすっかり疎遠になって、今では全く消息も聞かなくなった。叔父だけが私たち家族との繋ぎ目だったから。


そんな思いを抱きながら、金屏風や茶の湯の道具を見て歩く。信長、秀吉、家康本人でなく、彼らが臣下に与えた鎧や兜も展示されてはいたが、やはり目を引いたのは茶の湯関連。あの時代はお茶席が政治を左右したというのは嘘ではなそさそうだとあらためて感じた。まぁ、歴史学者がたくさん、そう言ってるんだから、間違いない(笑)。


時代とともに色落ち、色焼けはあるにしろ、「金」というのは凄いんだなぁと。同じ屏風絵でも墨絵風の物はよほどその絵自体に迫力が無いとなかなか…ところが、金屏風は少し剥げていようがくすんでいようが、お構いなしに迫ってくる。


金屏風など大きな展示品も多かったせいか、ちょっと疲れた。館内は平日ということもあり、ゆったりと鑑賞できた。限られたスペースにびっしりと浮世絵が展示されていた「浮世絵展」よりは、よっぽど楽チン!


退場後、本館や東洋館も見て回ろうかと思ったけど、意外に疲れていたので、法隆寺宝物館だけ見て帰宅。前庭のベンチで休んでる人が多いのも頷ける。1日いてもきっと、回りきれないだろう。楽しかったけど、まず体を鍛えてから行かないと(汗)。それに、特別展示入場料だけでは全てを楽しむことが出来ないというのもちゃんと分かった(汗)。


withコロナの時代。美術館、博物館へのお出かけも事前予約が必要になり、さらに事前にしっかり調べれば、さらなる楽しみもちゃんと用意されている。そういう準備が必要な時代なのだ。


そうそう、正門入場時の検温はおでこじゃなくて、手首だった。これが良い。おでこは検温する方もされる方も意外に顔を近づけてるのが気になっていたんだ。平成館の入口で入場券バーコードを読み取る際、なかなか読み取れないスタッフがいた。検温もバーコード読み取りも読み取る側の機器操作のセンスが問われる。


新しい時代には新しいセンスが求められている。それを実感した入場口!