今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

大震災’95


地下鉄サリン事件の後、関係者を探し出し、きじをより深く精査して1冊の本に仕上げた「アンダーグラウンド」。物凄く分厚い本を読んで、大変な事件事故にはこうした記録は絶対必要だと思ったのを覚えている。


つい最近、阪神大震災についても同様の本があると知った。当時生後半年ほどだった次男が既に26歳になっている。


グラフ誌などは数点買い求めたが、当時の記憶を再確認するためにも読んでおきたいと思った。


「大震災’95」小松左京 著(講談社文庫)


以下、感想。。。






















当時、阪神間にいた小松左京氏。東京でニュース映像だけを見ていた私には、そこに居た人にしかわかり得ない思いを知ることができた。


しかし、小松左京氏もご自身の周辺では被害的にはそれほどでもなく、テレビに映し出された阪神高速道路の倒壊現場などに大きな衝撃を受けたのは私と変わりないようだった。


日本沈没」という地震大国・日本にもしやと思わせる小説を書いた人だけに、地震後の取材は的確で、何が出来て、何が出来なかったのか、それを元に今後どうあるべきか考察されている。


本書はちょうど新聞連載を始めるところだった小松左京氏がその紙面を阪神大震災についての連載への変更を申し出て、認められたことから、早い段階で可能になったらしい。


直接的な被害状況より、今後の対処に大きく取材の力点が置かれているようだ。阪神間を大混乱に陥れた地震の第一報の不確定さと、それを受けるネット局の大本・東京との温度差。関係各所だけでなく、そこに暮らす人々さえ関西に地震は無いと強く思い込んでいた状況。


読まなければ分からない状況や分析が紙面の限りがある中でも十分に伝わってくる。さすが、小松左京氏だ。


既に25年以上が過ぎ、当時対談した各所のリーダー達の思いはどれほど形になったのだろう。そろそろ10年になる東日本大震災にもその経験と研究は十分に活かされたのだろうか。


小松左京氏は本書の中でも「一次資料」として残すことの大切さを何度もおっしゃっている。作家としての矜持ということだ。


読んでおいて良かった。