今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

コロナの時代


今年の初め頃、中国で始まったコロナ騒動。SARSやMARSの時のように、これも対岸の火事的に扱われるんだろうなぁ…なんて甘いこと考えてたら、船籍も船長も日本には全く関係ないのにクルーズの出発港だからという理由で、豪華クルーズ客船がコロナ患者をたくさん乗せて横浜に寄港した。


豪華客船だから、確かに贅沢な旅行の最中の人もいたはずだが、乗船者の日本人の多くは日本の高度経済成長の真っ只中で遮二無二に働いて現役引退をした高齢者だった。定年後にやっと時間が出来て、ご夫婦で夢の旅に出発した人も多かったと聞く。


特別な人たちの優雅な遊びの果ての結果ではなく、善良な普通の人たちの不運と言ってよい状況も多かったはずだ。


様々な緊急事態を乗り越え、全ての消毒作業が終了してクルーズ船が横浜港から出港した頃には、日本はそれどころではなくなっていた。


感染リスクの高い高齢者の無謀な行動の数々がマスコミで報道され、感染リスクが低いはずの若者たちに行動制限を求める結果となった。若者たちにしてみれば、身近に高齢者が居ない生活をしてる人など不満タラタラだったろう。気持ちは分かるけど…若者たちはこれからの社会の中心になる人たちだから、その辺の社会規範や社会の構造を理解してもらわないとね…


でも、マスコミで報じられた呆れるような感染振り撒き行為をしてる高齢者は極一部だと思う。近所の高齢者が多く暮らす団地なんて、お天気の良い日は団地前の公園にお散歩に出る人がいっぱいだったのに、春以降ほとんど見かけなくなった。


最初は「非常事態宣言」とどう違うのか戸惑ったりもしたが、「緊急事態宣言」なんて言う、生きてる間に耳にすることは無いと思ってた宣言まで聞くハメになり、小中学校は休校で、仕事はテレワークと言う名の自宅待機になり、人の流れの無くなった町で唯一地元スーパーの前にだけ黒山の人だかり。世の中の動きにすぐに対応できない自分に呆然とした。


そして、世界に目を向ければ、とんでもない数の感染者。感染者が多ければ、結果として助からない人も増える。日本だってけして人口が少ないわけではないけれど、日本の感染者数に比べたら、桁が違う国が登場してくる。


軽症で済む場合であっても、その人の体質が影響するのか、後々まで後遺症に悩む人もいるらしい。ほぼ無症状で感染期間をやり過ごしてしまう人もいる中で、どこにどう注意をしていったら良いのか…


飲食店の休業要請や町のお店の時短営業。社会のリズムを作り出していたそれらの店の非日常の動きで、自分たちの生活も大きく変わった。


こうして今年1年振り返ってみると、どんな感染対策をしながら、どうやって社会と接していくのかをそれぞれが考えていく日々だったと。


全てをストップすれば、人の動きは減り、感染は減るだろう。でも、その「一時停止」は世の中の全てを停止することになり、経済的に困窮する結果も見えている。


それぞれが十分な感染対策をし、コロナを念頭に置いた行動様式を身につけ、社会活動をする。個人においてはそれしか方法が無い。後は国や自治体が、そうした新しい行動様式の啓蒙をし、サポートするしかない。補償なのか支援なのか…


そんな流れの中で、一斉休業→時短営業→定員半数の座席販売→全席販売により飲食制限、と少しずつ緩和してきた映画館が、「映画の日」である12/1を機に曜日に関係なく、全席販売+飲食制限解除を発表した。


同じ日に、歌舞伎の新しい公演をテレビで紹介宣伝している猿之助さん(私は未だに亀治郎さんって呼んじゃうんだけど…汗)が「歌舞伎を直にお客様に観ていただきたい。でも、そこで絶対に感染者を出してはならない。歌舞伎は静かにご覧いただく公演だから、定員の制限はないが、でも、だからこそ、これからも歌舞伎は座席を定員の50%に減らして公演していく。だから、皆様に安心してお越しいただける」と発言していた。


これでは確かに厳しい状況だろう。公演1つにどれほどのお金がかかるか…それを入場料収入で回収するのが興業だ。それを国の指針を踏まえながらもさらに業界独自の判断で定員半減で公演を敢行する。結局、社会に向けてのこの姿勢だと思うのだ。そのうち最初の方針ではままならなくなって、さらに1段も2段も緩和するかもしれない。それでも、最初の姿勢はきっと忘れない。


こうみると、緊急事態宣言解除後、各種公演のしばりが徐々に緩和されると1番に全席販売に踏み切ったのは映画館だ。徐々に緩和したように感じるかもしれないが、それは違う。混雑する休日に全席販売…って逆じゃないの?って思った。飲食制限したところで、持ち込めばスルーだ。


売り上げが上がれば、業界としてやっていけるのは分かるが、本当に大丈夫なのかと足が遠のく人は多いと思う。この結果がシビアに出るのはずっとずっと後のことだ。コロナが過去の感染症となった時、映画は家で見るものになっていないと良いが…


だいたい次の映画上映への間隔が15分とか20分で何が出来るのだろう。小さい映画館だったり、観客が少なければ、対応可能かもしれないが、座席や手すりの消毒なんてしてる暇は無いだろう。気休めに座席用の消毒剤や消毒シートを用意している映画館もあったが、それをスタッフが全ての来場者に勧める場面には遭遇しなかった。消毒液やシートが置かれた台に 「椅子や肘掛けの消毒にお使いください」との注意書きが添えられているだけで、気づいた人がご自由にどうぞって…


再開後、私が鑑賞した映画館は5つ。何れも消毒剤や消毒シートの用意はあったが、スタッフが使うように声をかける場面は無かった。早めにスクリーンに入場して見ていたが、それらで自分でシートや肘掛けを消毒する人はほんの数人だった。何十人も入場していてだ…


1館だけ、前上映で使用した座席のみだけど、消毒していた劇場があったが、そこは上映の合間の清掃にスタッフを数名出して対応していた。その姿勢を見た時、これからは同じ映画ならこの映画館で観ようと思った。


結局、人間が利用するものなのだ。人の感情が今後の行動を左右するのだ。


映画も商売だし、私のように観るだけの人間には分からない契約上の問題もあることだろう。どうにもならないことだってあるかもしれない。でも、映画館の換気についての映像を公開したところで、さして、良い影響は無いだろう。


これから公開を控える映画にも観たい作品があるが、全席販売&飲食制限解除は私には大きな足かせになっている。