今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

アイ・アム まきもと


イギリス映画「おみおくりの作法」の日本版リメイク作品として紹介されていた本作。しかし、監督はちょっと違うと言っていた。まず、国の違いからくる死生観や葬儀に関する慣習や宗教などそのまま日本に当ててリメイクすることは困難だったと…


確かにねぇ…


おみおくりの作法」は大好きな映画で、あの主演俳優さん(お名前失念…涙)は、普段は脇を固めるタイプの役者さんで、ちょっと怖い(精神的に…)犯人役などをされてた記憶がある。バンバン主演を張るタイプの人ではなかった。そこへ行くと本作主演の阿部サダヲは違う。基本的に彼はバンバン主演を張る。しかし、カッコ良くて男らしくて優しい絵に描いたような主人公を演じる人ではない。


そこが、通じたのか、本作での彼はピッタリハマってた。この前観た「死刑にいたる病」は、はっきり言って(本作を観た後の今だから言える)ミスキャストだ!


そして、ここに松下洸平くんが登場する。日本版として製作するにあたり、1番日本的に手直ししたのは警察との関係だそうだ。オリジナルのとおりに作ると日本での孤独死の描き方が借り物になってしまう。そこで、丹念に取材し、日本での孤独死はその後の対応で警察との関係がより多くなっているのだそうだ。


その警察に、牧本と直接関わる警察官に松下洸平くんをキャスティング。


コロナで撮影が1年延期されたそうで、本来なら2年前に撮影し、そのまま昨年公開されていたと考えると現在の「松下洸平」の名の大きくなり具合に驚いたりする。


昨年の今頃に公開されていたら、彼が阿部サダヲさんと番宣に顔を出すことも少なかっただろう。かつて「燃えよ剣」の公開記念イベントで主演の岡田准一が「松下洸平くんを見つけたのは僕たちだ」と言っていた。その後、コロナで公開が長く延期された結果、「スカーレット」でのブレイクに遅れをとってしまったと…


本作もまさにそれで…昨年の「最愛」での大ブレイクに至り、それを受けての公開だ。グングン行く時はちょっと回り道のようでも結果として良い方に行くのだろうか。まるで10年くらい前の小栗旬を見てるみたいだ。今後、王道を歩くと思われる人の今が勝負の数年間がまさに今の彼ではないか。


本作を観てつくづく感じたのは、これは阿部サダヲの映画だということ。宮沢りえさん、満島ひかりさん、國村隼さん、ちょい役にもたくさんの名の知れた俳優さんが登場する。並の豪華キャストではない作品なのだ。それでも、やっぱり阿部サダヲの映画だと感じるのは水田監督はじめ製作陣が阿部サダヲという役者を知り尽くしているからではないか。


松下洸平くんの登場時間はそれほどでもない。でも、強く印象に残るのは登場人物たちにあまり動きが無いなかで、彼だけが牧本に怒り散らし、イライラ感をぶち撒けながら歩き回るからだ。劇中で1人だけ異質。本来のキャスティング時期からすれば、そんな異質で重要なアクセントのある役を「朝ドラ」でちょっと名の知れただけの俳優に託すとは水田監督も製作陣もチャレンジが過ぎると思うわけだが…


そして、ラストで自分の負けを認める姿が、まぁ美しいこと。これは舞台役者だからこその佇まいだなぁと。水田監督はこの舞台役者としての彼にオファーしたんだなと…


心濯われ、考えさせられる映画。ぜひ劇場で。なにより庄内の美しい風景は大きなスクリーンで!